毎日やってくる、家族のためのごはん作り。「栄養バランスも考えなきゃ」「子どもが喜ぶものを用意しなきゃ」と一生懸命になりすぎて、心が少しだけ疲れてしまうことはありませんか?
そんな悩めるママたちへ向けて、SNSで絶大な支持を集めている料理家・れもんさんが提案するのは、手抜きではなく前向きな「てま抜き」という選択肢です。
先日、待望の初書籍を出版したれもんさんに、ライフステージに応じて変化したという料理との向き合い方やレシピに込めた想い、そして家族みんなが笑顔になれる食卓の秘密について、たっぷりとお話をうかがいました。
かつては「じっくり料理」、いまは「てま抜き」。
ライフステージの変化と向き合うということ

現在、れもんさんは4歳と2歳のお子さんを育てる二児のママ。20代の頃は、じっくりと時間をかけて料理をすることが何よりの「癒やし」だったといいます。
「時間を気にせずキッチンにこもり、いろいろな料理を作るのが好きでした。当然、“時短”なんてまったく意識していなくて。むしろ、心行くまでキッチンに立つこと自体が私にとっての趣味であり、愛すべき時間だったんです」
しかし、出産を経てライフステージが変わると、状況は一変。自分の時間はほぼなくなり、子どもをあやしながらの料理は思うように進みません。
「頼れる両親もおらず、当時はコロナ禍もあって人との接点もほぼない日々。完璧主義な性格が災いして、一人目の出産後は自分で自分を追い詰めてしまい、孤独で、本当にしんどい時期でした」と振り返ります。
「心も体もボロボロになりかけたとき、思いきって『時間をかけてしっかり料理を作らなければいけない』という思い込みを手放してみたんです。そこが、現在の私の『てま抜き』スタイルの始まりでした。そうしたら、家族は変わらず『おいしい!』と笑顔で食べてくれて。時間をかけることだけが、愛情の証明ではないんだと気がついたんです。それからは、便利アイテムを活用して調理時間を短縮したり、洗い物が少なくなる工程を考えたりと、いろいろな『てま抜き』を追求しています。
結果、心に余裕が生まれてイライラが減り、子育てを楽しめるようになりました。これは私にとって、すごく大きな変化だったと思います」

がんばるエネルギーを少しだけ減らし、いろいろな工夫をすることで心のゆとりを生み出す。そのマインドチェンジによって、キッチンは再び、れもんさんにとって「家族との温かい時間を育むかけがえのない場所」へと変わっていきました。
子どもの「五感」を刺激する!
料理名に隠された『オノマトペ(擬音)』の魔法
れもんさんが発信するレシピのアイデアには、家族を笑顔にする遊び心が散りばめられています。そのひとつが、「くるくる」「まるまる」「てりてり」「ふわふわ」といったオノマトペを用いた愛らしいお料理のネーミングです。
このかわいい言葉たちは、子どもたちとのコミュニケーションを円滑にする魔法の道具。今回の書籍の編集を担当した柏倉友弥さんも、この魔法に魅了された一人です。柏倉さんの幼いお子さんたちも、れもんさんのレシピが大のお気に入り。家で一緒に料理をした際、子どもたちが「くるくる」「ふわふわ」という言葉を口ずさみながら、笑顔いっぱいでお手伝いに夢中になってくれたのだそうです。
「小さな子どもにとって、食事は『五感』で楽しむもの。言葉の響きが楽しいと、それだけで食卓の雰囲気がやわらかくなりますし、料理を作っている私自身も楽しい気分になれるんです。だから、私のレシピの名前は、聞いただけでワクワクしてしまう、食べるのが待ち遠しくなるような響きにこだわっています」(れもんさん)
皮をかぶせるだけ!
包まなくていい「まるまる餃子」

念願の初書籍の中から、大人も子どもも大好きな餃子を、より手軽につくれるように考えた「包まない餃子」レシピをご紹介します。「てま抜きでもおいしい!」とぜひ感じてもらいたいです!
【材料】 14~15個分
・豚ひき肉…250g
・キャベツ…200g
・餃子の皮…14~15枚
・塩…小さじ1/3
A しょうゆ…小さじ1
鶏ガラスープの素…小さじ1
ごま油…小さじ1
にんにく(すりおろし)…小さじ1/2
しょうが(すりおろし)…小さじ1/2
・片栗粉…大さじ2
・砂糖…小さじ1/2
・水…60ml
・ごま油…小さじ2
・ポン酢しょうゆ、ラー油(お好みで)…各適量
【作り方】
1.キャベツはみじん切りにし、塩をもみ込む。
2.フライパンにひき肉、Aを入れ、粘りが出るまでこねる。
3.1の水気をよくしぼり、2に加えて全体がなじむまで混ぜる。たねを14~15等分にして丸く成形し、餃子の皮をかぶせてフライパンに並べる。
4.中火で1~2分焼く。水をまわし入れ、ふたをして弱めの中火で6分蒸し焼きにする。ふたを外して水気をとばし、ごま油をまわしかけて中火でカリっとするまで1~2分焼く。器に盛り、大人はお好みでポン酢しょうゆ、ラー油をつけて食べる。
未来へつなぐ、食卓の記憶。
母の味から、わが子の定番へ
れもんさんが考案した数あるレシピの中で、特に大切にしている思い出の一品があります。それが、今は亡きお母様から受け継いだという「くるくるとんかつ」。幼い頃、お弁当の日はいつもリクエストしていたという“母の味”が、時を経て、今度はれもんさんの家庭の定番料理になっています。
「母は料理上手で、おいしいごはんをいろいろと作ってくれました。そのなかでも私は『くるくるとんかつ』が本当に大好きで。いつかレシピ本を出すことができたら絶対に載せたいと、ずっとSNSでも発信せずに温めていた一品なんです」

ぶ厚いとんかつ用のロース肉ではなく、薄切り肉をくるくると巻くことで、子どもでも噛み切りやすく、火通りも早い。幼い頃に受けた溢れんばかりの愛情の記憶が、現代を忙しく生きるママを助ける、とびきりやさしいレシピへと進化を遂げました。
「家族みんなで当たり前に食卓を囲めることは、奇跡のような時間です」
お母様との早すぎるお別れを経験したからこそ、れもんさんの言葉には、日常の何気ない瞬間を慈しむ温かさが宿っています。
最後に、今後チャレンジしたいことを尋ねると、素敵な夢を教えてくれました。
「昨年(2025年)に「食育アドバイザー」の資格を取得したので、今後はさらに、悩めるママたちに寄り添うレシピや、心の負担を軽くするアイテム開発に力を入れていきたいです。
私の真のテーマは、『ママを笑顔にする』こと。ママが太陽のようににっこり笑っていると、家庭全体の雰囲気がパッと明るくなります。少し肩の力を抜いて、家族みんなが楽しく心地よくいられる食卓がひとつでも増えるように、お手伝いしていきたいです」
ママだけでなく、パパやおじいちゃんおばあちゃん、学生さんや一人暮らしの方、料理をするすべての方に知ってほしい、愛ある「てま抜き」レシピ。受け継がれるあたたかな食卓の記憶を胸に、れもんさんはこれからも、たくさんの家庭へやさしい笑顔と幸せな時間を届けていきます。
Profile

料理研究家 / れもん
料理研究家・料理インスタグラマー・Nadia Artist・食育アドバイザーとして活動中。石川県出身、在住。二児(4歳、2歳)の母。料理が苦手&忙しいママに向けた簡単・時短な「てま抜きレシピ」を発信。フォロワーからは「簡単なのに子どもが完食してくれる」「親子で一緒に食べられるから助かる」と支持を集めている。
Instagram:@mgmg_remon
『れもんのおいしくて絶賛! てま抜きごはん』(ワン・パブリッシング)
2児の母であるれもんが、忙しい毎日でも続けやすく、栄養バランスを整えやすい時短レシピや工夫を紹介。子どもに安心して食べさせられるアイデアが満載の一冊です。子ども用と大人用を作り分けなくてOK、家族全員で食べられる点も大きな反響を呼んでいます。
取材・文=水谷花楓 カメラマン=難波雄史
