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ひらめきを一瞬で残せる筆記具。機能美を追求したペンに宿る、
ラミーの魅力

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ラミービギナーにおすすめの万年筆

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数多くのシリーズが登場しているラミーの中でも、ビギナーに向いている万年筆について、清水さんのおすすめを教えていただきました。フォルムや色の好みなどから最初の一本を決めてもかまいませんが、気をつけなくてはならないのが、“万年筆は一本一本の書き味が違うこと”。

「まったく同じ万年筆でも、ペン先の書き心地はわずかにそれぞれ違います。できれば店頭で試し書きをし、自分の筆圧や持ち方に合った万年筆を選んでください。また、試し書きをしに行くときは、普段使っているノートや、これから書きたいノートを用意していくといいですよ。店頭にあるものと紙質が違うだけでも、インクの乗りやペンの滑りが違うのです」

1. ドイツの小学生も使う基本の万年筆

LAMY safari(ラミー サファリ) / LAMY AL-star(ラミー アルスター)
4000円+税 / 5000円+税
※写真はラミー サファリ

1980年に登場して以来、最も多くの本数が生産されているというサファリシリーズ。ドイツの小学生が愛用するだけあって、筆圧をかけなくても美しい文字を書きやすく、安価で購入しやすいモデルです。

「限定カラーがあるのも、人気の理由のひとつです。写真左のミントグリーンは2019年の限定色で、同時に同じくパステル調のピンクとブルーが発売されました。重厚感がある万年筆とは違い、シャープペンやボールペンのように普段使いができます。デザインや機能がほぼ同じであるアルスターは、子ども向けに開発されたサファリの兄弟モデル。アルミ製でやや重みがあり、わずかに大きくて大人の手に馴染みやすく作られています」

 

2. 長く使ってペン先を育てていく万年筆
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LAMY 2000(ラミー 2000)
3万円+税

50年以上前に作られたラミー 2000は、とてもシンプル。ボディにある継ぎ目は触ってもまったくわからないシームレスなデザインで、まるで一体型のように見えます。

「ペン先は14金製で、スチール製のサファリやアルスターとは書き心地がひと味違います。14金のペン先は、自分の書き癖や書く角度、筆圧に合わせて馴染んでいきますので、使えば使うほど書きやすくなっていきます。14金のペン先は劣化しにくく長く使い続けられるので、サファリやアルスターを使ってみて、万年筆の楽しみ方がわかってきたら2000を使ってみるとよいでしょう」

こちらはラミー 2000のペンシル。ほかにローラーボールペン、ボールペン、4色ボールペンなども展開。
こちらはラミー 2000のペンシル。ほかにローラーボールペン、ボールペン、4色ボールペンなども展開。

 

万年筆のほかにも傑作がいろいろ

最後に、万年筆以外のラミー製品についてご紹介いただきました。デザインのコンセプトは変わりませんが、使う人のことを考えた機能が随所に見られます。

1. クリップのデザインが秀逸
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LAMY dialog 2(ラミー ダイアログ2)ローラーボール
2万8000円+税

このキャップレスの水性ボールペンは、キャップをしなくてもインク漏れやペン先による汚れがないように開発されたデザイン。

「ボディをひねるとペン先が出てくる仕組みですが、ペン先が出るとクリップがボディの中に収まるようにできています。つまり、ペン先が出ているときは胸ポケットに挿すことができません。このとき、ボディ中央にある2つの突起が揃うので、視覚的にも指先でも“書ける状態になっている”と確認することができます」
「ボディをひねるとペン先が出てくる仕組みですが、ペン先が出るとクリップがボディの中に収まるようにできています。つまり、ペン先が出ているときは胸ポケットに挿すことができません。このとき、ボディ中央にある2つの突起が揃うので、視覚的にも指先でも“書ける状態になっている”と確認することができます」
「筆記を終えてペン先をしまうと、クリップが現れます。ペン先で洋服を汚してしまわないよう、持つ人のことを考えて作られていることに感動する一本です。とにかくフォルムが美しい」
「筆記を終えてペン先をしまうと、クリップが現れます。ペン先で洋服を汚してしまわないよう、持つ人のことを考えて作られていることに感動する一本です。とにかくフォルムが美しい」

 

2. どんな持ち方をしても書きやすい
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LAMY scribble(ラミー スクリブル)ボールペン・ペンシル
各6000円+税

持ってみると、そのマットな素材がきゅっと指に馴染むのが実感できる、丸みのあるボディ。それぞれクリップが着脱でき、どのような握り方をしても持ちやすく感じられます。

「“スクリブル”とは、走り書きや落書きを意味する言葉で、その名の通り、とにかくペン先を滑らせやすい感覚があります。ペンシルはノック式とドロップ式があるのですが、ドロップ式のボディにはグリップのような凹みがあり、指先を置きやすいデザインになっています」

こちらは清水さんが“毎日酷使している”という3.15mm芯を使うペンシル。硬度4Bの芯は紙面を滑るように書くことができ、メモやラフスケッチなどにも便利なのだとか。ただし、全身ブラックのこのモデルは残念ながらすでに廃盤となっています。
こちらは清水さんが“毎日酷使している”という3.15mm芯を使うペンシル。硬度4Bの芯は紙面を滑るように書くことができ、メモやラフスケッチなどにも便利なのだとか。ただし、全身ブラックのこのモデルは残念ながらすでに廃盤となっています。

 

3. ノックすると一瞬でペン先が出て全身が伸びる
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LAMY pico(ラミー ピコ)ボールペン
各7000円+税

限定カラーが出るたびに買いたくなってしまうサイズ感のピコシリーズ。

「ミニペンのジャンルだと思われてしまいがちなのですが、手の大きい男性も十分に使えます。閉じているときは93mmしかないのですが、伸縮性がありワンノックすると124mmになります。ポケットに入れておいて、ちょっとメモしたいときや思いついたときにシュポッと出せ、即書きにとても向いているペンです」

 

4. 極細の携帯用ペン
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LAMYラミー スピリット(ボールペン・シャープペン)
※販売終了

こちらは、すでに生産が終了したペンシル(他にボールペンもあり)。金属製のユニークな極細の形をしています。
「直径は6mmに満たないくらいの細さですが、実際に書くときはその細さを感じさせない製品です。手帳に沿わせて携帯するのに便利で、ペンケースに入れても場所を取りません。1枚の鉄板を巧妙に丸めて作っているため、全身フルメタルな容姿をしています。この重量感が、細軸らしからぬよい書き心地を生んでいるのです。廃盤となったラミーのペンの中で、もっとも復活してほしいモデルです」

 

ラミーや文房具のことをもっと知るための“教科書”

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『ラミー パーフェクトブック』1600円+税(枻出版)

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『趣味の文具箱』1600円+税(枻出版)

清水さんが編集長を務める月刊誌『趣味の文具箱』。2020年10月号は万年筆のインクを特集しています。万年筆を買ったらインクにもこだわりたい! という人には必見の情報を凝縮。
また、ムック『ラミー パーフェクトブック』では、歴代のラミー製品について詳しく解説されているだけでなく、工場の様子や本国・ドイツの小学生が使っている筆記具など、現地で取材したレポートも掲載されています。

 

お気に入りの文房具は、日々のモチベーションを高めてくれる大事なツール。デジタル時代のいまこそ、“指先から生まれるひらめき”は筆記具で残していきたいものですね。縁遠い存在だと思っていた万年筆も、ラミーなら普段着のように暮らしに取り入れられそうです。

Profile

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「趣味の文具箱」編集長 / 清水茂樹

株式会社枻出版社で、文房具に関するムックや書籍を担当。2004年に「趣味の文具箱」創刊し、世界中の文具メーカーの取材を精力的に続け、最新の文具情報を発信。筆記具や文房具の魅力と、手で書くことの楽しさを伝えている。2009年からISOT「日本文具大賞」審査委員を務める。

趣味文CLUB http://shumibun.jp/

 

取材・文=吉川愛歩 撮影=安藤佐也加、我妻慶一 [トップのイメージ写真] 構成=Neem Tree