七福神を宿す7種の具材入り! 昔ながらの「恵方巻」の作り方
「キユーピー3分クッキング」(日本テレビ)に12年間レギュラー出演をし、40年以上料理教室を開講している牧弘美先生。10年前にお孫さんが生まれた頃から、節分に恵方巻を食べる風習を楽しむようになったそうです。
「手作りならば、具材の量や海苔の大きさを調整すれば、好みの大きさに仕上げられます。具材は椎茸(シイタケ)と干瓢(かんぴょう)の煮物に卵焼き、鰻(うなぎ)か穴子の蒲焼きに、色味の良い野菜を3種加えます。7種の具材を七福神に見立てた先人の発想が素敵ですね」(牧弘美先生、以下同)
【すし飯を作る】ごはん粒はしゃっきり艶やかに!
今年のラッキーカラーでもある白を象徴する、メインのすし飯。美しくおいしく仕上げたいところです。「研いだ米を炊飯する前に30分ほど水切りし、炊飯時の水分量はきちんと測ります。そして、ご飯が炊き上がったら、しゃもじで切るように混ぜましょう。こうすることで、ご飯粒の形を壊さずしゃっきりと艶やかに仕上がります」(牧弘美先生、以下同じ)
【材料(太巻き3本分)】
・米…2合
・水…2カップ
・酒…大さじ1
・昆布(5cm角)…1枚
<すし酢>
・米酢…大さじ4
・砂糖…大さじ2
・塩…小さじ1
<手水>
・水…1カップ
・酢…大さじ2
【作り方】
1.
米を洗ってザルに上げてから30分おいた後、炊飯器の釜に米を入れる。水、酒、昆布を加えて炊く。
「ザルにあげた米の中央を少しくぼませると(【材料(太巻き3本分)】の写真参照)、水切りが早く進みます。上部にある米粒が乾燥し過ぎないように、キッチンペーパーをかぶせておきます」
2.
<すし酢>を合わせて耐熱皿に入れて500Wで10秒ほど加熱。砂糖と塩が溶けるように、しっかりと混ぜる。1が炊き上がったら昆布を取り出し、釜の中で2の<すし酢>を回しかけ、しゃもじで切るように混ぜる。
「砂糖と塩をしっかりと溶かしておかないと、味にムラが出てしまいます。すし酢が全体にまんべんなく行き渡るように、しゃもじで受けながら入れていきます」
3.
ある程度混ざったら、米粒が手につかないようにしたり容器を清潔にしたりする役割の<手水>で拭いたバットまたはすし桶にあけて広げる。うちわであおいで冷まし、あら熱が取れたら3等分する。
「米粒をつぶさないように、しゃもじは縦に入れます。うちわであおぎながら速やかに覚ますことで、ご飯のベタつきが防げ、艶が出ます。ごはんを冷ましすぎると固くなってしまうので、ひと肌程度に留めましょう」
【7種の具材を作る】必要なのはほとんどが身近な食材!
7種類の具材を用意するというと、なんだか大変そうに感じますが、並べてみると、冷蔵庫にありそうなものが多いことに気づきます。「椎茸とかんぴょうの煮物は少々手間がかかりますが、冷蔵庫で1週間ほど持つので、多めに作っておくのがおすすめです。野菜の炒め物や炒飯の具材として加えると、コクが増しておいしいですよ」
・干し椎茸とかんぴょうの煮物
【材料】
・干し椎茸(中)…3枚
・かんぴょう(無漂白)…10g
<調味料>
・干し椎茸の戻し汁…1カップ
・だし汁…1カップ
・砂糖…大さじ2
・しょうゆ…大さじ1と1/2
【作り方】
1.
干し椎茸はひたひたの水を入れ、冷蔵庫でひと晩寝かせて戻す。
「ボウルに入れた状態だとしいたけは水に浮きやすいので、ラップをのせておくとよいでしょう。タッパーやチャック付きビニール袋に入れてもOK!」
2.
かんぴょうはぬるま湯で洗い、塩(小さじ1)でよく揉み、水で洗い流す。
「かんぴょうはぬるま湯で洗うと早く戻ります。塩もみをすることで汚れが取れる上に、早く味が染み込みやすくなります」
3.
1と2を鍋に入れ、<調味料>を加え、落とし蓋をして中火弱で煮る。水気がほぼなくなってきたら火を止め、冷ましておく。
・卵焼き
【材料】
・卵…3個
<調味料>
・砂糖…大さじ2
・塩…小さじ1/4
・酒…大さじ1
・サラダ油…適量
【作り方】
1.
ボウルに卵を割り入れ、<調味料>を加えて泡立てないようによく混ぜる。
「フオークで混ぜると、白身が切れやすくなり、溶きやすくなります」
2.
卵液を裏ごしする。
「裏ごしをすることで白身のコシがなくなり、全体が黄色く、キメ細かい状態に焼きあがります」
3.
卵焼き器を熱して、サラダ油(少々)をなじませる。弱火にして卵液の1/3量を流し入れる。
「油はキッチンペーパーを使って伸ばし、卵焼き器全体に均一の状態で油がなじむようにしましょう」
4.
卵液が半熟状になったらヘラで向こう側から手前に巻き、空いた部分に3と同様にサラダ油を薄くなじませてから、卵焼きを向こう側に移動する。手前の空いた部分にサラダ油をなじませ、残りの卵液の1/2量を流し入れる。向こう側の卵焼きの下に卵液を何回か流し入れながら、卵液がほぼ乾いたら、向こう側の卵焼きを手前に巻いてくる。さらに同様に繰り返して焼き上げる。荒熱が取れたら、縦長に3等分する。
「卵焼きを持ち上げて、下に卵液を流すことで、卵焼きの表面が焦げ付かず、美しい黄金色の卵焼きになります」
そのほかの具材も要点をまとめて解説します。
にんじんの煮物
【材料】
・にんじん(1cmの棒状)…3本
<調味料>
・だし汁…1カップ
・砂糖…大さじ1
・塩…少々
【作り方】
1.<調味料>とにんじんを鍋に入れて中火にかける。やや硬めに7〜8分ほど煮る。
ほうれんそうのおひたし
【材料】
・ほうれん草…3株
・塩…少々
・しょうゆ…小さじ1
【作り方】
1.ほうれん草を塩茹でして水にさらし、水気を絞る。しょうゆをふりかけて、もう一度しぼる。
「ほうれん草に味付けしたしょうゆはギュッとしぼってOK。ゆるいとすし酢が崩れてしまいます。小松菜でも代用できます」
塩もみきゅうり
【材料】
・塩もみきゅうり(1cm角)…3本
うなぎの蒲焼き
【材料】
・うなぎの蒲焼き(市販品)…1/2尾を細長く3等分にカットする
【恵方巻を巻く】願いを込めて、美しく!
いよいよクライマックスとなる作業へ! ラップを使っても太巻きを巻くことはできますが、せっかくなので巻き簾(まきす)を用意してトライしてみませんか。巻き簾は100円ショップでも購入できます。
「七福神の具を丸く巻くことは福を巻くことにつながると言われています。恵方巻をつくることも縁起のいい作業なのでしょうね」
【材料(太巻き3本分)】
・すし飯…1でつくったもの
・7種の具材…2でつくったもの
・焼き海苔(全形)…3枚
【作り方】
1.
まな板の上に巻き簾を広げ、焼き海苔の表面を下にして、巻き簾の手前に沿って縦長に置く。
「焼き海苔には表と裏があります。ツルツルしている方が表なので、まちがえないようにしてくださいね」
2.
焼き海苔の向こう側を3cmほど空けて、すし飯を均一に広げる。
「向こう端を少し高く土手のようにすることで、具が中心にくるようになり、きれいに巻けます」
3.
手前側を2〜3cm空けて具材を並べていく。
「色のバランスを見つつ、焼き海苔の長さに合うように切り揃えながら、具材を並べていきましょう。椎茸のようにバラバラとした具材は向こう側に置くと巻きやすくなります」
4.
具を押さえて手前を奥の土手に合わせるようにして、一気に巻く。
「土手をつくったことで、巻くときの目標が定めやすくなると思います。最初はドキドキするかもしれませんが、一気に巻いてしまう勢いが上手に仕上げるコツです」
5.
巻き簾の端をひっぱり、締める。
「向こう側の巻き簾を外に引っ張ることで、手前側の巻き寿司がギュッと締まります。巻き簾を使うことで、長い太巻き全体に均一の力が入れられる感覚がわかると思います」
6.
右手で巻き簾を上に引っ張りながら、左手で太巻きを転がす
「太巻きを転がした後で、巻き簾の上から両手で固く締めましょう」
7.
最後に太巻きの両端を押さえて形を整える。
「巻き簾の端に太巻きの端を合わせ、左手で太巻きを支えながら、具材を軽く押し込むように整えます」
<ワンポイントアドバイス>
焼き海苔のサイズや具材の量を変えたり、具材の種類を変えたりして自由にアレンジを!
「恵方巻は切らないで食べるものなので、最初から食べきれる量の長さでつくりましょう。1/2サイズの焼き海苔で巻いたり、具材を細く切って細巻きにしたりすることもオススメです」
牧弘美先生オススメの簡単に応用できる具材は、たくわん、べったら、野沢菜などの漬物や、カニカマ、ちくわなどのかまぼこ類、めんたいこやプロセスチーズ、刺身など、市販のお惣菜で挑戦すれば簡単にできます。今年のラッキーカラーである白や黄色の食材を取り入れながら、華やかでパワフルな恵方巻を作ってみましょう。
Profile
風水師 / 愛新覚羅ゆうはん
風水師だけではなく、占い師、開運ライフスタイルアドバイザーとしても活躍。中国黒龍江省ハルビン市生まれ。映画「ラスト・エンペラー」で知られる清朝の皇帝・愛新覚羅一族の流れをくむ。5歳のときに来日し、幼少期から備わった透視能力に加え、タロットカードや占星術なども活かし占い師「ジョカ」としてデビュー。15年間で延べ20,000人以上を鑑定。『神様とやるすごい運トレ』『お金の引き寄せ方は魂だけが知っている』(日本文芸社)、『腸開運』(飛鳥新社)、『いちばんやさしい風水入門』(ナツメ社)など著書多数。
https://aishinkakura-yuhan.com
Profile
料理研究家 / 牧弘美
牧クッキングサロン調布教室主宰。和食、西洋料理、中国料理、エスニック料理など、幅広いジャンルの家庭料理を得意とする。料理教室では、「四季の創作和食」が好評で、料理家として活躍しているプロや、講師を目指す生徒が全国各地から通っている。日本テレビ『3分クッキング』のレギュラー講師12年間を経て1200点もの料理を紹介してきた実績も。80歳を越えた今も現役で、出張講師、企業の商品開発、各種雑誌へのレシピ提供など、多方面で活躍中。娘は料理家のまきまさ美さん。
https://www.makicookingsalon.jp/
取材・文=今井美由紀(Neem Tree) 撮影=安藤佐也加