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まん丸だけじゃない!? 地域で違う“ご当地”月見団子とその成り立ち

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「中秋の名月(十五夜)」には、誰しも一度は月を見ながらお団子を食べた経験があるはずです。素朴な味わいが、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれますよね。

ところで「月見団子」と言えば、どんな形を思い浮かべますか? 白くて丸いお団子が、ピラミッド型に積まれているものを想像した人が多いのではないでしょうか。実はその月見団子、全国共通ではないんです。

そこで、地方の郷土料理に詳しい料理家の梶山葉月さんに、ご当地月見団子の特徴やレシピについて教えていただきました。

 

月見団子を供える風習はいつ始まった?

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十五夜の風習は、平安時代が始まりとされています。もともとは一年でもっとも月が美しいとされるこの日に、秋が収穫時期となる里芋やサツマイモを供え、五穀豊穣を祈る行事でした。現在も使われる「芋名月」という別名は、ここから呼ばれるようになったものです。

その後、江戸時代に入ってから庶民の習慣としてお月見の文化が定着。同じく秋に収穫となる米の豊作を祈るため、月見団子を供える風習が生まれたのです。当時の人は月を神様と捉えていたので、月に見立てた真ん丸のお団子を準備することで、収穫への感謝を表しました。一緒に飾るススキも、稲穂に似ていたことから同様の意味が込められていたんですよ。

 

全国にはどんな月見団子がある?

江戸時代にお団子をお供えする文化が始まった後、各地でも独自の月見団子が生み出されていきました。

例えば名古屋では、茶・白・ピンクのしずく型がスタンダード。茶は皮つきの里芋、白は皮をむいた里芋をイメージしているのだとか。残るピンクは、子どもが親しみやすい色として作られるようになりました。また、中国・四国地方では串だんごがスタンダードとされています。

中でもひときわインパクトがあるのが、沖縄県の「フチャギ」です。塩茹でされた小豆が、そのままお餅の周りに付いています。

「昔、悪魔に憑りつかれて、お墓に閉じ込められた人がいたとか。亡くなったと思った親族がお葬式の準備を進めていたところ、通りすがりの人に助けられてなんとか生還。お葬式用に用意していたお餅に小豆を付け、お祝い用に変えたのが始まりと言われています。そのため、魔除けの意味がある小豆は潰さずに、そのまま付けるんです」(料理家・梶山葉月さん、以下同)

沖縄の「フチャギ」。
沖縄の「フチャギ」。

地域によって意味も形も全く異なる月見団子。今回はその中から厳選し、関東、関西、静岡の月見団子レシピを紹介します。まずは関東風のレシピで、基本的な月見団子の作り方を確認していきましょう。

 

誰もが知っているオーソドックスな形。関東地方の月見団子

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「関東の月見団子は、まん丸のように見えますが、実は少しだけ潰れています。というのも、まん丸だと、枕団子(死者の枕元に供える団子)に似ていて縁起が悪いと言われているんです。また、昔は十五夜にちなんで直径が1寸5分、約4.5cmもの大きさだったそう。ただ、あまり大きすぎると火の通りも悪くなってしまうので、自分好みの食べやすい大きさで作ってみてください」

 

【材料(15個分)】

・上新粉…240g
・砂糖…大さじ2
・お湯…240ml

「関東のお団子に限らず、材料は近所のスーパーで揃うような、ごく普通のものでかまいません。砂糖についても、今回は上白糖を使っていますが、お好きなもので大丈夫です」

 

【作り方】

1. 材料をすべてボウルに入れ、お湯を足しながら混ぜていく
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お湯は最初に全て入れるのではなく、50ml程度残して後から足していきましょう。混ぜていくうちにだんだんとダマができてくるので、ひとつにまとまるまで、少しずつお湯を加えていきます。
「上新粉はお米でできているので、あまり粘り気がありません。そのため水で作ってしまうと、固くぼそぼそとした仕上がりになってしまうんです。お湯を使ってお米の成分をふやかし、粘り気を出すことによって弾力が出て美味しくなります」

2. 耳たぶくらいの固さになるまで練る
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「まとまってきたら手で練り始めましょう。最初は少しべたつくかもしれないですが、徐々に固まってきます。指で押した時に耳たぶ程度の固さになるまで練るのがポイントです」

3. 適度な大きさに丸めて、湿らせた布を敷いたバットへ
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15等分した生地を丸め、湿らせた布かオーブンペーパーを敷いたバットの中へ置いていきましょう。こうすることで、お団子がバットにくっ付いてしまうのを防ぎます。

4. 沸騰したお湯で茹でる
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沸騰したお湯に入れ、7~8分茹でていきましょう。火が通ると浮いてくるので、それを合図に取り出します。

5. 冷水で冷やす
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取り出したお団子は、冷水につけてあら熱を取りましょう。ずっと浸しておくと、ふやけて食感が悪くなってしまうので、サッと洗えたらすぐにバットへ移していきます。その後、ピラミッド型に15個重ねたら完成です。
「作った日に食べきれず、冷蔵庫で保管していたら固くなってしまった……なんて経験はありませんか? そんな時には、おしるこに入れたり焼いたりして食べるのがおすすめです。甘さを控えめにしてあるので、けんちん汁に入れて、すいとんのようにして食べてもおいしいですよ」

 

関東のオーソドックスな月見団子の作り方をマスターしたら、続いて関西、そして静岡の月見団子に挑戦してみましょう。