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インテリアと共存する選び方・飾り方は?大人のための
「雛人形」選び

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桃の節句に、子どもの健康と幸せを願って飾る雛(ひな)人形。近年は洗練されたデザインが数多く登場し、季節のインテリアとして大人の女性が自宅に飾る機会も増えているといいます。

雛人形を現代のインテリアに合わせて飾るコツや、大人の女性があらためて手に入れたいインテリア性の高い雛人形について、インテリアコンサルタントの内藤怜さんに教えていただきました。

雛人形は、金屏風を背景にした男雛女雛を頂点とし人形や道具を並べた7段飾りが伝統的な形。美しく豪華ですが、現代の住宅事情では飾るのが難しくなっています。

雛人形を飾る意味とは?
大人の女性も飾っていい?

桃の節句・雛祭り(ひなまつり)とは、五節句のうちのひとつ「上巳(じょうし)の節句」のこと。そこに平安貴族の間で親しまれていた「ひいな遊び」が合わさって、雛人形の風習が生まれました。乳幼児の死亡率が高かった昔、穢れ(けがれ)を移す身代わりとして川へ流す「流し雛」として存在したのち、人形が豪華になるにつれ流すものから飾るものへと変化。形は変わっても、子どもが健康に育ち幸せになってほしいと願う気持ちが込められていることに変わりはありません。

インテリアコンサルタントの仕事を始めて以来、“大人の女性が雛人形を素敵に飾る方法”を伝えてきたという内藤さんは、大人の女性が雛人形を飾る意味について、次のように話します。

「インテリアと人の心は深くリンクしていると、私は考えています。雛人形は子どもの頃に親から贈られた大切なもので、子どもの幸せの象徴です。大人になってから雛人形を飾るということは、季節の移ろいを感じるだけでなく、子どもの頃に一身に受けた“幸せを願う気持ち”を思い出す時間にもなるのです。
また、家族が増えて日々の家事に追われたり、年齢を重ねて体の変化に悩んだりと、大人になって環境が変わるほど、充実した時間を持ちにくくなっている人は少なくないのではないでしょうか? そういった方にとっても、幸せな気持ちを思い起こさせてくれる雛飾りは、“心の栄養”になってくれることでしょう」(インテリアコンサルタント・内藤怜さん、以下同)

インテリアに合わせて
雛人形を飾る3つのコツ

雛人形を現代のインテリアに合わせて魅力的に飾るコツとは?

「現代の私たちが暮らす家のほとんどは“洋”の空間ですよね。そこに昔ながらのお雛様をそのまま飾ると、“和”の雰囲気が強くなりすぎて違和感が出てしまいます。どんなに素敵なお雛様でも、あまりにもインテリアから浮いて見えると残念です。
雛人形と周辺家具や雑貨類とに、素材、色、形などの“つながり”を持たせて統一感を出すとインテリアになじみ、子どもの頃に飾っていた何十年も前の雛人形でも、とても素敵に見えます。自宅のインテリアに合わせて、おしゃれに飾るコツを具体的にお伝えしますね」

1.背景を意識して飾る

「実際に私も、娘のために丸顔のかわいらしい雛人形を購入したのですが、毎年同じ飾り方をしているのが少しもったいなく感じていました。そこで当時はナチュラルアンティークなインテリアが好きだったこともあり、IKEAのドールハウスにリバティの布を貼ってお雛様を飾ってみたんです。写真でお分かりいただけるように、屏風を背景にしているときとはずいぶん印象が違いますよね。現代的なインテリアとも調和して、かわいい空間に仕上がりました。
この飾り方のポイントは、お雛様の着物に入っているカラーを背景にも取り入れて“つながり”を持たせたこと。カラーに統一感があるだけでまとまりが生まれ、空間が引き締まります。私は、雛人形のお着物に入っているカラーをひとつずつ選んで、毎年背景を変えて楽しんでいます」

・親王飾りは飾る場所がポイント
「大人になってからお雛様とお内裏様だけの『親王飾り』として飾る人も多いと思います。このときの注意点は飾る場所を意識すること。やはり背景が大事になってきます。伝統的な雰囲気を残す雛人形の背景が窓のサッシや、ごく一般的な壁では違和感が生まれます。そのような場所では、背景にきちんと屏風を立てて飾ってみてください
もともと雛人形の飾りとしてセットになっていた屏風でもいいですし、屏風のみ買い換えるのもひとつの手です。ほかにも、インテリアに合うように、布や折り紙などを使って屏風を手作りするのもおすすめです。このときも、雛人形のお着物の色味と屏風の色を統一すると、グッと洗練された雰囲気になります」

2.素材にこだわった雛人形を飾る

「最近は、陶器や木製、ガラス製のおしゃれな雛人形もあり、大人になってからあらためて購入する方もいます。いずれの素材も、お皿やマグカップなど、自分の日常生活の中に当たり前にある素材ばかり。身近にある素材で作られた雛人形なら、自宅のインテリアとも調和しやすいですね。
素材感のある雛人形は、人形、というより最初からインテリア性が高いものが多いと思います。インテリアを意識して飾ることが最初から意図されてデザインされているので、玄関先や自分のお部屋の棚、出窓のスペースにちょっと飾っておくだけでも、素敵に見えます。ひとり暮らしのお部屋でも、取り入れやすいのではないでしょうか」

3.ほかの伝統工芸品と組み合わせて飾る

「素材感がある雛人形をもうちょっと素敵に飾るコツをお伝えします。私のお客様で、有田焼のお雛様をお気に入りの陶器のお皿と一緒にディスプレイされていた方がいます。人形では感じられない、陶器ならではのほっこり感・温もり・あたたかさ・なめらかさが感じられるのが何よりの魅力です。お雛様の着物の色と陶器の絵柄の色味が合っているのでまとまりもあり、心地よい空間に仕上がっています。
このように、伝統工芸品と組み合わせたり、ガラス製のお雛様であれば、ガラス瓶を横に置いて桃の花を1本飾ったりするだけでも、素敵な印象になります」

洋食器やガラスとの組み合わせは新鮮ですが、もちろん和のテイストと合わせてもOK。

「私は以前、いただいたお手玉を雛人形といっしょに飾ったことがありましたが、柄のテイストも似ているので違和感なく溶け込みました。このように、和のテイストを取り入れるのも素敵です。自宅にあるお気に入りのものと雛人形とをセットで飾ってみてはいかがでしょう」

インテリアのプロがおすすめする
雛人形 6選

インテリア性を重視したい大人の女性が雛人形を購入するなら、どのような雛人形がおすすめでしょうか?

「母として子どものために購入する場合と、大人になってから自分のために購入する場合とでは、お雛様選びの視点も変わってくると思います。
お子さんのために購入する場合は、現代的なインテリアと調和するデザインや色彩を意識した雛人形も増えているので、その中から素敵なものを選んでみてはいかがでしょうか。落ち着いた印象の雛飾りは、今のお住まいのインテリアにしっくりくるだけでなく、それこそ大人になっても飾れます」

雛人形の顔立ちにも変化があるといいます。

「昔はお顔が面長で知的な印象の雛人形が多かったと思いますが、最近は丸顔で柔らかい顔立ちのお雛様がたくさんあります。かわいらしい雰囲気なので、お子さんにも人気です。現代のインテリアにも合わせやすい佇まいがあると思います」

5,000円台から30万円台まで。子どものために選ぶ雛人形

・伝統美を受け継いだ、コンパクトで飾りやすい雛人形

五色「吉野雛」親王飾り
32万円(税込)

「ふっくらしたお顔がやさしくかわいらしい、原考洲が完成させた木目込みの美しい雛人形です。創業は明治44年。伝統的な雛人形の美意識を引き継ぎながら、現代のインテリアに合うよう自由に雛飾りのセットが選べる『HINAシリーズ』が人気です。
私のおすすめは『吉野雛』。こちらはフォルムそのものがかわいく、存在感があります。基本的に雛人形は単体で飾るとこじんまりしてしまうものが多いので、屏風も含めて集合体で見せた方がしっくりくるのですが、こちらは屏風がなくても素敵に見える点もおすすめです。屏風なしで飾る場合は、背景をスッキリと、余白を意識して飾ってみてください」

・現代インテリアと調和する木目調の屏風やお飾り

工房ひな雛「新春雛 栓木目飾り」
13万5399円(税込)

「木目が美しい栓の木製の屏風が飾られた、まさに現代的な雰囲気のお雛様です。『ひな雛』のコンセプトは『女の子から女性へと成長する日々を照らすお雛様』。お子さんはもちろんですが、大人の女性にとっても長く愛せる素敵な佇まいの雛人形です。洗練されたモダンな印象があるお雛様なので、現代のインテリアとも調和します。
とくに、ナチュラルなインテリアのご自宅にぴったり。雛人形を楽しみつつ、空間に馴染ませたいとお考えの方は、このような木の佇まいの雛人形がおすすめです」

・好きな柄の着物に着せ替えできる、我が家だけの雛人形

中川政七商店「季節のしつらい便 桃の節句(手作り雛人形)」
5170円(税込)

「日本の伝統行事を親子で気軽に楽しめるキットとして販売されている『桃の節句セット』です。好きな柄の着物に着せ替えたり、お雛様のお顔も自分で描くことができるなど、親子で手作りしながら桃の節句を楽しめるキットになっています。
こちらの雛人形のおすすめポイントは、生地やデザインなどがセレクトされているので、どんな作品になってもかならず空間になじむ、という点です。また手作りのよさが味となるのも何より魅力。『つくる』『しつらう』『つながる』という体験を通じて、季節を感じることができる素敵なキットです」

1〜2万円で手に入る、自分のために選ぶ雛人形

・まるでアート! 飾るだけで洗練された空間に

硝子屋PRATO PINO「雛人形 杉台 S・M・Lサイズ」
Sサイズ=1万1000円・Mサイズ=1万4300円・Lサイズ=1万7600円(すべて税込)

「ひとつひとつ手作りで作られているガラス素材のお雛様です。デザインのシンプルさも去ることながら、杉台の上に飾ることで趣を感じられる逸品。豪華なお飾りなどはありませんが、ひと目見てお雛様だとわかりますし、まるでアートのような、とても目を惹くデザインが素敵ですよね。

空間にガラスならではの透明感と高級感を生み出すので、雛人形を飾りたいけれど、さりげなく季節や女性の祝い事を感じたい方におすすめです。サイズもS・M・Lサイズまで3つ展開されており、ご自宅の状況によってちょうどいいサイズ感を選ぶことができるのもポイントです」

・落ち着いた雰囲気がやさしい時間を演出

北の小さな工房YS「木製雛人形」
2万3200円(税込)

「木で作ることにこだわって製作された雛人形です。着色されていないため、自然で落ち着いた色味が素敵です。上品な佇まいも、大人の雛飾りにぴったりと言えます。両手に乗る小ぶりサイズですが、なんとも言えない存在感がありますよね。また、丸い木のフォルムと木の温もりでほっこりやさしい気持ちになれます。飽きのこないデザインで、どのような場所でも飾りやすい点にも魅力を感じます」

・愛おしいお顔立ちの陶器の雛人形

薬師窯「錦彩典雅親王雛」
1万3200円(税込)

「千年以上の歴史があるやきものの街、愛知県瀬戸市の陶磁器工芸メーカー・中外陶園の商品ブランド『薬師窯』のお雛様です。余計な装飾がそぎ落とされ、お人形のふっくらと愛らしいお顔立ちと、存在感が引き立っていますよね。シンプルな空間にもなじみやすいお雛様です。また、お着物の色味にも春を感じます。リビングの一角、和室はもちろん、すっきりとした場所に飾ることで、よりお人形の美しさを楽しむことができます」

雛人形は、かつては子どものためのものであり、女性が成人して自立を果たすと、その役目を終えていました。しかし、近年は洗練されたおしゃれなデザインの雛人形が豊富に揃い、大人の女性も飾りやすくなっています。

「毎年の桃の節句に雛人形を飾ることが、女性としてのやさしさや幸せを振り返る時間になれば素敵だと思います」と語る内藤さん。お雛様をインテリアに上手に取り入れて、長くお付き合いを続けていけるといいですね。

Profile

インテリアコンサルタント / 内藤 怜

25歳よりインテリアコーディネーターとして10年間活動。結婚式場やホテルをはじめとした施設、カフェ、レストラン、サロンといった店舗のインテリアコーディネートを手がける。その後、インテリアコンサルタントとして独立。「ドアを開けた瞬間にキュンとする景色のあるお家づくり」をコンセプトに、500件以上の家のお部屋づくりをサポート。家庭を守り、家庭を支える女性たちが心から癒やされ、好きと感じるインテリアづくりための提案を行っている。近著に『ソファは部屋の真ん中に―買わない・捨てないで部屋は心地よくなる』(自由国民社)がある。
HP

取材・文=江原香奈(Neem Tree) 写真提供=内藤怜