京都の冬は酷寒で有名。その反面、夏は夏でまた、酷暑の地として知られています。気温だけでいえば、埼玉県熊谷市や群馬県館林市、高知県四万十市という最高気温を熾烈に争うおなじみの都市がありますが、気温以上に暑さを感じさせるのが、盆地ならではの高い湿度による蒸し暑さなのです。
そんな京都で冷涼感を得るための方法を、5つ仕入れたのでご紹介しましょう。
[ 目次 ]
1.苔の感触を足裏で体感する
2.苔寺で緑色の世界に囲まれる
3.器まで氷製のかき氷をいただく
4.百鬼と地獄の絵を鑑賞する
5.“怪談和尚”の怪談を聴く
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苔の感触を足裏で体感する
“苔むす”が年月の長さを表す言葉とされるように、湿気た日陰で長らくひっそりと生えるものだったのが、最近ではすっかり扱いが変わり、“愛でるもの”へと昇格した苔。一年のうち、とくに梅雨時がもっとも湿気をはらんで美しくなる見頃とされています。京都には苔庭が美しい寺がいくつも存在しますが、ここ圓光寺を訪れると、一風変わった体験ができるのをご存知でしょうか?
それが、圓光寺自慢の庭「十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)」で、一面の苔を踏みしめながら“作務(さむ)”を体験できるというもの。
![十牛之庭を、本堂内から眺める。牛を追う牧童を描いた「十牛図」をモチーフに作られた池泉回遊式庭園で、ここには静かな別の時間が流れるよう。](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/06/20190614_kyoto_002.jpg)
苔を踏んでもいいの!? という声が聞こえてきそうですが、実は意外と苔は踏みしめに強く、問題はないのだそう。普段は用意された草履を履いて作務、つまり庭掃除を行いますが、6月30日のたった1日だけ、“裸足で”体験することができます。(※詳細は記事末尾を確認してください)
![竹箒とみのを手に、苔庭を掃除する。葉が落ち、草が芽吹いているなど、自然の息吹を間近で感じられる。](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/06/20190614_kyoto_003.jpg)
足裏に感じる苔は、まさに上質な絨毯の上を歩いているようにふかふか。それでいて押し返してくるような弾力があります。朝露の水気も相まってしっとりとしたその触感は、いままで感じたことのないものでした。
![普段の作務体験では、草履を履くが、それでも充分ふかふかと苔の上を歩く感覚は体感できる。](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/06/20190614_kyoto_004.jpg)
圓光寺では、苔を足裏で体感するほかにも涼を得る方法があります。
・水滴の音が涼を誘う
十牛之庭の入り口には水琴窟(すいきんくつ)が置かれています。水琴窟とは、水の音を楽しむために、庭に仕掛けられた装置。水が一滴一滴落ちるごとに、涼やかな澄んだ水音がかすかに響きます。
![縁が広い盃型の手水鉢を用いた水琴窟。ほかにあまり例がなく、この形は「圓光寺型」と呼ばれる。](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/06/20190614_kyoto_005.jpg)
・坐禅でヒヤッと!?
圓光寺では、坐禅堂で坐禅の体験も可能です。ご存知の通り、坐禅は禅の修行のひとつで、精神を統一し自身と向き合う作業。苔や青もみじ、円山応挙がよく訪れたという竹林など、緑に囲まれた圓光寺の坐禅堂では、座しているだけで心が洗われていくようです。
![座禅を組むのは圓光寺の住職・大坪慶寛さん。さすがの安定感。](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/06/20190614_kyoto_006.jpg)
ただ、やはり集中が途切れるなど心が乱れれば、てきめんに姿勢に現れます。すると、いただかなければならないのが警策(きょうさく)。
受ける際は、背中を少し丸めるように屈むのがよいとされ、この体勢によって警策の衝撃を吸収できるため、痛みはそれほど感じないのでご心配なく。ただ、お坊様が自分の前で立ち止まったときの、肝を冷やすような心持ちと言ったら。これもまた“涼感”と言えるかもしれません。
【Information】
瑞巌山 圓光寺(えんこうじ)
所在地:京都市左京区一乗寺小谷町13
電話番号:075-781-8025
拝観時間:9:00〜17:00
https://www.enkouji.jp/
「日曜早朝坐禅会」
毎週日曜の朝6時から開催。坐禅・作務(草履履き)・法話・朝粥をセットで体験できる。要予約。
続いての方法は、360度緑色の世界が迎えてくれる、美しい苔寺です。