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『ムー』とのコラボ本が大ヒット!『地球の歩き方』が出した
“旅行しにくい時代”への答えとは?

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10年後には、ムーの言葉が真実になる……かも?

大ヒットを記録中の『地球の歩き方ムー』は発売前から重版出来。今は入手困難となった初回限定版には、『月刊 ムー』デザインの表紙に着せ替えられる帯付き。
大ヒットを記録中の『地球の歩き方ムー』は発売前から重版出来。今は入手困難となった初回限定版には、『月刊 ムー』デザインの表紙に着せ替えられる帯付き。

元木:そして、月刊ムーとのコラボですね。まずは大笑いしました。地球の歩き方を愛している宮田編集長が、なぜムーなのか……。学研プラスに来たからってまさか、無理矢理コラボしたわけじゃないよね? と思ってしまって(笑)。一体どんな背景があったのでしょうか。

※『月刊ムー』は学研プラス(旧学習研究社、学研バブリッシング)が出版元として40年間発行。現在は学研プラス傘下のワン・パブリッシングが承継している。

宮田:きっかけは地球の歩き方の現社長の一声でした。もともとムーの編集部にもいた経緯があったので、やろうよ! って。僕自身も幼少期には、世界の七不思議に始まり兄貴とツチノコを探しもしました。愛読書は手塚治虫全集だったので、ムーに出てくるような地球外生命体やUFOの存在は否定派ではありません。
あと実は、ムーと地球の歩き方って同級生(創刊年が同じ1979年)でして。地球の歩き方として、謎めいたムーの世界を歩かせることができたら面白いと思ったので、かなり楽しく制作することができました。

元木:めちゃくちゃいい話ですね。ムーのファンのためにも、そして世界中を旅している人たちにもいろんな解明をしてくれちゃう発想が最高です! 制作はどのように進めたのでしょうか? 苦労はありませんでしたか?

宮田:そうですね、見せ方の部分ではたくさんの工夫があります。例えば、エジプトのピラミッドにしても地球の歩き方の観光地としての解説と、ムーが唱える不思議な説を両方読んで楽しめる作りになっています。

元木:交互にページがあるので、1つの場所について、地球の歩き方とムーが追いかけっこのように読める面白さがありますね。

同じ地域でも、地球の歩き方とムーそれぞれの視点で書かれており、情報量もたっぷり!
同じ地域でも、地球の歩き方とムーそれぞれの視点で書かれており、情報量もたっぷり!
地球の歩き方のページでも、ムー的な解説が入るコラムはデザインをムー仕様に。
地球の歩き方のページでも、ムー的な解説が入るコラムはデザインをムー仕様に。
また、ページの隅にはUFOに連れ去られるモアイ像のパラパラ漫画も! 細かいところまで見逃せないのは、地球の歩き方イズムです。
また、ページの隅にはUFOに連れ去られるモアイ像のパラパラ漫画も! 細かいところまで見逃せないのは、地球の歩き方イズムです。

宮田:実は、ムー的な視点ってすごく大切で。例えば、歴史的な地域を訪れて、「ここをあの英雄が……」って何もない場所を見て、思いを馳せるのは難しい。でも、史実だけでは語り尽くせない部分もムーの解釈を知ることで、イメージできてワクワクするかもしれない。事実や史実だけを丁寧に正確に伝えることも大切ですが、地球の歩き方読者にもムー読者にも、新しい旅の視点を与えられる一冊になったと思います。

元木:しかも、11万部(2022年3月時点)の大ヒット! すごいことですよ。

宮田:くっついちゃいけない“二人”がくっついたからですかね?(笑)内容はしっかりしているので、「便利なものがまとまった」「欲しい情報が一冊になった」というニーズもあったかもしれませんね。

元木:あとSNSの発信もとても上手ですよね。

宮田:ありがとうございます。発売30日前からTwitterでの告知を開始し、毎日ツイートし続けました。
Twitterは、人によって接する時間帯が変わります。いつもフォロワーさんが初見の状態を意識してつぶやいていくと、10回連続でつぶやいたこともそのうちのひとつが「初めて見た情報」になることもあるんですよね。しつこいくらいやった結果、発売前に重版が決定しました。

ムー以外にもご存知、大泉洋さん出演の『水曜どうでしょう』ともコラボしていた地球の歩き方。創刊時の表紙デザインに、ポエトリーなキャッチコピーが綴られた『ヨーロッパ21カ国完全制覇(上巻)』(右)と、現代の馴染みある表紙デザインにメルヘン街道の朝が描かれた『ヨーロッパリベンジ ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 21年目のヨーロッパ21カ国完全制覇(下巻)』(左)。どうでしょう軍団とともに旅している気分を味わえるファンにはたまらない、まさに永久愛蔵版!
ムー以外にもご存知、大泉洋さん出演の『水曜どうでしょう』ともコラボしていた地球の歩き方。創刊時の表紙デザインに、ポエトリーなキャッチコピーが綴られた『ヨーロッパ21カ国完全制覇(上巻)』(右)と、現代の馴染みある表紙デザインにメルヘン街道の朝が描かれた『ヨーロッパリベンジ ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 21年目のヨーロッパ21カ国完全制覇(下巻)』(左)。どうでしょう軍団とともに旅している気分を味わえるファンにはたまらない、まさに永久愛蔵版!

 

世界中を旅すれば、世の中から争いごとはなくなる

元木:素晴らしい! 今後、ムーのようなコラボはありますか? ムーと同じ出版社には『歴史群像』という、これまた面白そうな雑誌もありますが?

宮田:ドキッ(笑)。いろいろと考えてはいます。旅と歴史は、とても相性がいいんですよ。福沢諭吉が書いた『西洋事情』ってご存知ですか? 幕末から明治にかけて書かれたもので、「レディの前でタバコを吸うな」とか書いてあるんです。お遍路さんのガイドブックにも「茶屋の娘がかわいい」って書いてあったり、昔のガイドブックには生きた情報があるんですよね。リブート作品のようにできたら面白いなぁと考えたりはしていますよ。

元木:なるほど。いろいろな切り口ができそうですね。最後に、これからについても伺いたいのですが、海外旅行も少しずつ再開できそうな雰囲気も出てきましたよね。

宮田:ついに本業の海外旅行が始まる! って感覚はありますね。ただ、世界の情勢でいうとまだまだ気軽に……というのは少し難しい部分もあります。

僕、中東エリアがすごく好きで、シリアも行ったことがあるんですけど、とにかくみんな優しい人なんです。カバンのチャックが空いていたら、肩叩いて教えてくれるんですよ。それに「どこまでいくの?」「バス停はあっちだよ」ってホスピタリティも世界トップレベルだと思います。世界で、そこに住む人を知れば、嫌いな国なんてなくなると思っちゃいますよね。

これはあくまで個人的な考えですけど、全人類が世界中を旅すれば、世界中から争いごとはなくなる……って信じたいですね。

Profile

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『地球の歩き方』編集長 / 宮田 崇

大学1年の時にインドに行って以来、旅にはまる。コツコツ旅に出て24年、72の国と地域を訪れた。過去の担当タイトルは、ベトナム、カンボジア、東アフリカ、チュニジア、エジプト、南米、メキシコ、アメリカ全般、ハワイ、など多数。地球の図鑑シリーズ第1弾『世界244の国と地域』で、世界には244の国と地域があることを再認識し、世界制覇を密かにたくらんでいる。

ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。

 

取材・文=つるたちかこ撮影=泉山美代子