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クラシックなレターグッズが再びブーム!ジャーナリングでも活用したい
「シーリング(封蝋)」の進化した楽しみ方

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SNSなどを中心に、近年ふたたび「シーリング」の人気が高まっています。デジタル時代の今になって、いったいなぜ? その理由やトレンド感のある使い方について、日本初のシーリング専門書『シーリングワックスの本』の著者である、平田美咲さんに解説していただきました。

「シーリング」「シーリングスタンプ」「シーリングワックス」とは?

「シーリング」とは、英語で「Wax Sealing」というとおり、手紙を蝋で封じること。かつて中世ヨーロッパの貴族が文書の差出人を証明したり、封筒を閉じたりするために使っており、外交を通して日本にも伝来しました。その後、徐々に一般庶民の間にも広まっていったものの認知度は低く、つい最近まで知る人ぞ知るアイテムとして存在しつづけました。「シーリングワックス」とも呼ばれます。

その「シーリングワックス」とは封じる際に使用する蝋(封蝋)を、「シーリングスタンプ」とは溶かした蝋に押し付け封緘(ふうかん)する金属印をいいます。

第一次“シーリングブーム”は10年以上前のこと

令和になって訪れたシーリングブーム。平田さんによると、実は10年ほど前にも小さな注目を浴びたといいます。

「2010年頃、マスキングテープなどのパーソナル文房具がブームとなり、その流れに乗ってシーリングやシーリングワックスも存在が広まっていきました。とはいえ、そのころはヨーロッパ製の輸入ものが主流だったため、取り扱っているお店は本当にごくわずか。手間がかかるという点からもあまり浸透しませんでした。軽いブームになったとはいえ、まだまだ手紙好きやアンティーク好きの人が『手紙に封をするもの』『アンティークな道具』として楽しむもの、もしくはごく一部の人が『結婚式の招待状などに高級感をプラスするアイテム』として使っている状況でした」(平田美咲さん、以下同)

なぜ再びシーリングが話題になっている?

「それから10年以上が経った最近、中国や韓国でシーリングを楽しむ人が増え始めたことで、日本国内での人気も復活してきています。SNSなどを通じ、あらためてシーリングの魅力が伝わったうえ、さまざまな種類のシーリングスタンプやたくさんの色数のシーリングワックスが安価に出回りはじめたこともあり、より手軽に始められるようになったのです

その結果、これまで『手紙に封をするもの』『アンティークな道具』もしくは『ウエディングアイテムなどの添えもの』だったシーリングが、『コラージュや、ジャンクジャーナルなどの作品作りに使う画材』として手軽に楽しまれるようになりました。シール感覚でさまざまなものをデコレーションするようになったのです。また、道具の種類が増えたことでコレクション感覚で楽しむ人も出てきています」

ジャンクジャーナルとは、イラストやマスキングテープ、リボンなどをコラージュしたアート作品のこと。シーリングは、封筒を閉じる機能ではなく、アートを構成する要素のひとつとして受け入れられるようになったわけです。

コラージュの材料としてはもちろん、手帳や日記のデコレーションにもぴったり。
リボンでくるんだ紙ナプキンに添えるだけで、特別感のあるテーブルコーデが仕上がります。

シーリングの基本的な道具

必要な道具が多そうなシーリングですが、実はワックス、スプーン、キャンドル、スタンプがあればOK。どれも身近なもので代用可能なので、意外と手軽に始めることができます。

・ワックス

溶かして使います。シーリングワックス専用の蝋は、普通のロウソクよりも粘り気があるのが特徴。おもにタブレットタイプとスティックタイプがあり、タブレットタイプはプラスチック感が強く強度があります。一方のスティックタイプは芯付きと芯なしの2種類で、芯付きの場合はワックスに直接火をつけて溶かすことができます。色付きのグルースティックでも代用可能です。

・スプーン

タブレットタイプのワックスを入れて溶かすときに使います。専用スプーンもありますが、計量スプーンやカレースプーンなどでもOK。深さのあるものがおすすめです。

・キャンドル

ワックスを溶かすために使います。ライターやアルコールランプでも大丈夫です。キャンドルホルダー(写真一番右)があれば、スプーンをキャンドルの上に置いておくこともできます。

・スタンプ

垂らしたワックスにギュッと押しつけ、模様をつけます。刻印が入っていればどんなものでもスタンプとして使えるため、ラバースタンプや消しゴムハンコ、金ボタン(※)で代用可能。プラスチック製のものは熱に弱いためNGです。※金ボタンは、接着剤でコルク栓などをつけて持ち手を作る必要があります

シーリングの基本的な手順

シーリングワックスの基本的な使い方について、平田さんにレクチャーしていただきました。

1.ワックスを火にかける

タブレットタイプのワックスを4~5個程度スプーンに入れたら、火にかけて溶かします。スティックタイプの場合はスティックの先をスプーンに押し付けるか、直接火をあててワックスを溶かしてください。

2.スジが残るまで溶かす

竹串や爪楊枝などでワックスを混ぜ、「の」の字を書いたときにスジが残る程度まで溶かします。

3.火にかけすぎた場合は少し冷ます

火にかけすぎるとブクブクと沸騰し、気泡ができてしまいます。沸騰してしまったときは火から外し、固まらない程度にゆっくり混ぜながら気泡をなくしましょう。また、ワックスがゆるすぎると垂らしたときに広がってしまうため、溶かしすぎた場合も火から外して、少し固まるのを待ちましょう。

4.ワックスを垂らす

シーリングワックスをつけたい部分に、スタンプの直径と同じくらいの大きさでワックスを垂らします。少し回しながら垂らすことできれいな正円になります。

「ちなみに結婚式のカード用に大量生産したい場合などは、グルーガンタイプを使うのがおすすめです。一つひとつ溶かして垂らす手間が減り、より簡単に作ることができます」

5. スタンプを捺す

ワックスが冷めないうちにスタンプを押します。模様をくっきりと出すために、強く力を入れて押すのがポイントです。

6. そっと外して完成

ワックスが固まったら、そっと外します。早めに外すと形がゆがんでしまうため、焦らず30~40秒ほど待つようにしましょう。また、外した後も固まっていないうちに触ってしまうとワックスがつぶれてしまうので、しばらく触れずに置いておきましょう。

「ワックスの垂らし方や押す力によってフチの広がり方が変わります。多少いびつでも、それが味となり魅力的に見えますよ」

これって失敗…?
シーリングワックスの応急処置

「ワックスを溶かしすぎてしまった」「一発でうまくできるか不安」「思い通りのワックスの色がない」など、シーリングワックスを作る際に気になることについて、平田さんに対処法を教えていただきました。

・ワックスが余ったら固めて再利用しましょう

ワックスは再利用できるので、余ってしまったワックスはクッキングシートやシリコンマットに垂らしておきましょう。失敗してしまったときも、火にかけて溶かせば作り直すことができます。また、使い終わったスプーンはキッチンペーパーでワックスをふき取り、きれいな状態で保管しましょう。

・失敗はクッキングシートやシリコンマットで回避

失敗したくない場合は、クッキングシートやシリコンマットの上に作るのがおすすめ。冷めたら簡単にはがすことができるので、超強力両面テープや多用途用接着剤、シーリングワックス用両面テープなどで好きな場所に貼り付けられます。

・ワックスを混ぜて自分好みの色に!

複数色のワックスを混ぜることで好きな色を作ることができます。また、あえて色が混ざらないように溶かし、垂らすときに少し回すことでマーブル色のシーリングワックスになります。

もっと個性を出したい!
シーリングのアレンジに挑戦

自分らしくアレンジできるのも、シーリングの魅力のひとつ。基本をおさえたら、ひと手間加えた作り方にもチャレンジしてみましょう。

・色を塗って細かな模様を際立たせてみる

文字や細かな模様など、デザインを際立たせたいときには、ペンで色を塗るのがおすすめ。ペイントマーカーなら、よれずにくっきりと塗ることができます。

ペンを立ててしまうと模様以外の部分にも色がついてしまうため、少し倒すのが上手に塗るコツです。

・ツートンカラーでもっと華やかにしてみる

色違いのシーリングワックスを重ねることで背景と模様の色を変えられます。難しいテクニックは必要ないので、意外と簡単に作ることができますよ。

まずは2色のうち上に乗せるシーリングワックスを作り、スタンプや模様の形に沿ってはさみで切ります。

切り終わったシーリングワックスを絵柄に合わせてスタンプに押しつけます。スタンプを下に向けても落ちないくらい、ぎゅっと指で押しましょう。うまくつかない場合にはサラダ油やベビーオイルなどを薄く塗って貼り付けるのもおすすめです。

2色目のワックスを垂らし、1色目のワックスを中心に落とすようにスタンプを押します。その後は基本の作り方と同じく、ワックスが固まったらゆっくり外しましょう。

・ラメやドライフラワーを使って雰囲気を変えてみる

溶かしたワックスの上にラメを落とし、スタンプを押すだけでOK! ワックスが固まらないうちに素早く落とすのがポイントです。

「最近のブームで模様のないスタンプも出回りはじめました。シンプルでまた違った印象のシーリングワックスになります」

ドライフラワーの上にワックスを垂らせば、ドライフラワーの華やかさがより目を引くシーリングワックスが完成。透明のワックスを使い、下に置いたドライフラワーを透かせるのも、今っぽくておすすめだそう。

たとえ失敗しても溶かして再利用できたり、少し形がいびつなほうが仕上がりに味が出たりと、初心者でもトライしやすい点がシーリングの魅力。専用の道具を揃えなくても身近なもので代用できるので、気軽にチャレンジしてみたくなります。

また「少し手間がかかるところも、シーリングの魅力のひとつです」と平田さん。便利なものにあふれて手間をかけることが少なくなってきた今だからこそ、シーリングワックスで特別感のあるギフトや手紙を贈ってみてはいかがでしょうか?

Profile

グラフィックデザイナー・イラストレーター / 平田美咲

フリーランスとして主に雑誌や書籍のデザイン、イラストを手がけるかたわら、リメイク雑貨、クラフト作品を発表するなどマルチに活動中。シーリングワックスに出会い、その魅力にとりつかれる。専門書が無かったことから2008年『シーリングワックスの本』(誠文堂新光社)を執筆。著書に『増補版シーリングワックスの本』(誠文堂新光社)、『印刷・加工テクニックブック』(誠文堂新光社)、『ボールペンイラストレッスンBOOK』(誠文堂新光社)、『エコ*コモノ』(青山出版社)、『かわいいエコ*雑貨』(小学館)、『かわいいパッケージクラフト(全3巻)』(汐文社)などがある。

取材・文=横塚瑞貴(Playce) 撮影=真名子