梅の実がたわわに実る初夏を迎え、“梅仕事”が楽しみな時期になりました。毎年6月に入ると、梅酒や梅シロップを作るのに適した、青いままの梅の実が出回り始めます。爽やかな香りと酸味がある梅シロップと梅酒は、疲れやすい夏にぴったりの清涼感ある味です。また、梅はクエン酸やポリフェノールなどの栄養も満点なので、お酒や砂糖に漬け込むことで、抽出したエキスを丸ごといただくことができるなど、メリットもたくさん!
今回は、梅酒と梅シロップの漬け方と、それぞれを使ったアレンジレシピを紹介します。ここではまずは【梅酒編】。
【ポイント1】
梅酒や梅シロップには「青梅」、梅干しには「完熟梅」を使う
6月上旬あたりから出荷がはじまる青梅は、硬くしっかりとしていて、酸味が強いのが特徴です。梅酒やシロップを作るほか、醤油や味噌で漬けたり甘酢漬けにしたりと、さまざまな調理法が楽しめます。ただし青梅には毒性があり、漬けていく工程で無毒化されていくので、生のままで食べることはできません。
一方、6月中旬以降に出回る黄色い完熟梅は柔らかく、桃や杏のような甘い香りがします。こちらは主に、梅干しを漬けるときに使います。完熟梅で梅酒やシロップを漬けることもできますが、実が潰れやすく、エキスが濁ったり発酵過多になってしまったりするので、青梅の方が失敗がありません。
ただし、青梅は手に入れられる時期が短いので、農園の予約サイトから事前に購入予約をしておくと安心です。また、時期になるとスーパーの青果売り場にも並びますが、はじめは小梅が並び、そのあとに大きな梅が並ぶので気をつけましょう。
【ポイント2】
梅酒&梅シロップ作りに使う砂糖は「氷砂糖」がおすすめ
梅酒と梅シロップのいずれも、漬けるときには砂糖が必要です。砂糖にはさまざまな種類がありますが、氷砂糖を使うのがおすすめ。
梅は、砂糖に触れている場所からエキスを出すので、氷砂糖のように梅に接する面が少ない方が、少しずつじっくりと味と香りを引き出すことができます。グラニュー糖や黒糖など、他の砂糖で作るとその違いも楽しめますが、梅全体に砂糖がついてしまうと、味や香りが薄くなってしまいます。あえて梅に砂糖をまぶすことなく、そっと瓶に重ねて入れていきましょう。
もし、粉状の砂糖やはちみつなどを使う場合は、溶け残りが瓶の底に溜まりやすいので、砂糖が早く溶けるよう毎日瓶を逆さにして揺すります。
ブランデー梅酒の作り方
梅酒にするお酒は、果実酒を漬けるために作られたホワイトリカー(焼酎)やブランデーが一般的ですが、他に日本酒や白ワイン、ジンなどで漬けることもできます。ホワイトリカーでつくる梅酒はあっさりしていて飲みやすいのに対し、日本酒で漬ける梅酒は、まろやかで旨味があります。白ワインやジンで漬けると、そのお酒独特の香りが楽しめ、カクテルのような味わいになります。ただし、好みの味のお酒で漬けられますが、酒税法により度数が20度以上のアルコールで製造することが義務づけられていますので、注意しましょう。
今回は、果実酒用に作られたブランデーを使って漬けてみました。梅を漬けたブランデーは香りが高く、甘みと丸みがあってロックでも飲みやすい味。この梅酒を入れてパウンドケーキを焼くのもおすすめです。
【材料と作り方を簡単に動画でチェック!】
【材料】
・青梅…1kg
・氷砂糖…700g
・ブランデー(使ったのは「果実の酒用V.O」)…1.8L
果実の酒用V.O
2180円+税
〈ほかに必要なもの〉
・食品用除菌アルコールスプレー
・キッチンペーパー
・瓶(3L以上のもの)
・竹串(爪楊枝でも可)
【作り方】
※手順1〜6までは、梅酒と梅シロップは共通です。
1.梅の実をよく洗う
梅の実をボウルに入れ、傷つけないように一粒一粒よく洗います。
2.水に浸けてアクを抜く
洗い終わったら水を替え、そのまま水に1〜2時間ほど浸してアクを抜きます。冷凍してある梅や黄色い完熟梅ではアク抜きは不要です。
3.ざるに広げてよく乾かす
梅の実をざるにあげたら、そのまま自然に乾くまで干しておきましょう。水分が残っているとカビの原因になるので、表面のしっとりとした感じがなくなるまで完全に乾かします。
4.竹串でヘタを取る
梅の実のおへそのところにあるヘタを、竹串でそっと取り除きます。梅の実を傷つけてしまうとカビや実崩れの原因になるので、慎重に行いましょう。
5.保存瓶を消毒する
少量を漬ける小さな瓶なら鍋で煮て加熱殺菌するのでもOK!しかし、大きな瓶を加熱することは難しいので、除菌アルコールスプレーを使ってまんべんなく吹きかけて、キッチンペーパーなどで拭き取って消毒します。瓶の口や蓋などもしっかり拭きます。作業の前に手指の消毒をすることも忘れないようにしましょう。
6.梅の実と氷砂糖を交互に瓶に入れる
瓶の底に梅の実を入れたら、氷砂糖をその上に入れ、交互に詰めていきます。梅の実を押したり潰したりしないよう、ふんわりと乗せていくのがコツです。
7.梅の実と氷砂糖の上からお酒を注ぐ
「果実の酒用V.O」は、一般的なブランデーに比べてまろやかな口当たりです。果実との相性を考えて作られているので、梅とブランデーの華やかな香りが楽しめます。
8.蓋をして冷暗所に置く
砂糖が溶けるまで、毎日2〜3回は瓶を揺すりましょう。砂糖が溶けても一日に一度はしてください。梅の実がお酒の上に浮いていたら、実にお酒がかぶるように揺すっておきます。そのうち梅の実がシワシワになって沈み、エキスが出尽くすころにはおいしくいただけるようになります。
9.3ヶ月くらいで飲み頃になる
3ヶ月くらいしたら、あっさりとした味の梅酒が楽しめるようになります。漬ける時間の長さによって梅酒の味が変化していき、熟成するほどにとろとろしたコクのある味に仕上がります。おいしくなるのは半年くらいから。2年以上漬けておくと、深い味わいになります。
梅の実は取り出しても構いませんが、取り出さずに入れたままにしておいても問題ありません。梅酒を飲むたび一緒に食べたり、あるいは取り出してジャムや料理に使ったり、工夫してみてください。
注意! 梅酒&梅シロップ作りで失敗する原因は“水分”
せっかく漬ける梅シロップと梅酒が、途中でカビたり濁ったりしてしまったら悲しいものです。どちらともに共通する失敗の原因のひとつは、梅の実に水分が残っていたり、瓶をよく拭き取らず水滴がついていたりしたことでカビてしまうこと。もうひとつは、砂糖がなかなか溶けないために発酵し、梅の実がシロップやお酒から出てしまい、泡立ってしまったり、梅の実が傷んでしまったりすることです。
失敗する可能性を減らすポイントは、この6点。
1. 梅の実や瓶の水分をしっかり拭いて、瓶の中に水分を入れないようにする。
2. 砂糖が早く溶けるように一日に数回は瓶を揺する。
3. 梅の実がずっと空気に晒されたままにならないよう、瓶を揺すったときに梅の実にシロップやお酒がかぶるようにする。
4. 漬けはじめた瓶を直射日光の当たる場所に置かない。
5. 砂糖の量を極端に減らしたり、アルコール度数の低いお酒で漬けたりしない。
6. 瓶や調理機具、手指の消毒をしっかり行う。
次のページでは、梅酒のアレンジレシピを紹介します。飲むだけではない楽しみ方をマスターしてみてください。