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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第6回
―ニュージーランドと5つの産地―

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2. ワイララパ地方マーティンボロー
− ロマネ・コンティのクローンがマーティンボローの主流 −

マールボロで初めてソーヴィニヨン・ブランを植えたモンタナ社による、1973年の政府研究機関に依頼した地質調査では、マーティンボローがもっともブドウ栽培に適した土地だという結果が出ました。けれども、その最適と判断された土地面積は狭く小さいものだったため、モンタナ社が本格的なワイン生産を行うために選んだのは、マールボロの広大な土地でした。

マーティンボローは北島の南端、首都ウェリントンから車で1時間ほどの距離にあります。はじめてブドウが植えられたのは1883年という記録がありますが、20世紀初頭の禁酒運動で生産は途絶え、近代ワイン生産の歴史はマールボロより少し遅れて、1980年前後に始まります。先の地質調査では、フランス・ブルゴーニュと似た自然環境によってもっともブドウ栽培に適しているとみなされたマーティンボローでは、現代に至るまでピノ・ノワールが中心に栽培されており、ブルゴーニュ由来の穂木「エイベル・クローン」が主に植えられています。

1970年代、ニュージーランドの税関職員だったマルコム・エイベルは、ロマネ・コンティの畑から違法に持ち帰られた穂木を没収します。これを検疫所で検査した後に自身の所有するオークランド近郊のブドウ畑に植えたことで、「エイベル・クローン」は産まれました。このクローンをマーティンボローの主要ワイナリーのひとつである「アタ・ランギ」のオーナー、クライヴ・ペイトンが譲り受けたことで、ロマネ・コンティを起源とするブドウ樹が広がり、マーティンボローのピノ・ノワールの歴史において重要な要素のひとつとなるに至りました。

まるで、よくあるワインのネットショップの売り文句のようですが、ニュージーランドのピノ・ノワールは歴史が浅いながら、ソーヴィニヨン・ブラン以上に高品質ワインを生産する可能性を秘めているのも事実です。そして後述するセントラル・オタゴやカンタベリーといった、同国内のピノ・ノワールの成功しているライバル産地との競合も、この国のピノ・ノワールの今後を楽しみにさせてくれる醍醐味でもあるのです。

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Ata Rangi(アタ・ランギ)
「Crimson Pinot Noir2018(クリムゾン・ピノ・ノワール2018)」
4200円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ