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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第10回
―スペインとポルトガル、5つの産地―

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2. アンダルシア(スペイン)
− シェリー、ヨーロッパの最南端に見るシャンパーニュとの共通点 −

シェリーは、スペイン南部アンダルシア地方の3つの街、ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サンルカール・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタマリアを結ぶ三角地帯で、アルバリサと呼ばれる石灰質土壌から造られる酒精強化ワインです。

シェリーのベースワインは、フロールと呼ばれる産膜酵母下で酸素と遮断されて熟成した薄い色調の「フィノ」と、酸化熟成に由来する琥珀色のコクのあるタイプの「オロロソ」の2種に大別されます。酒精強化されたワインは通常のワインに比べ、劣化しにくく輸送が容易だったため、古くからヨーロッパ諸国に輸出されてきました。特にイギリスでは食前酒としてシャンパーニュと並んで人気が高く、大英帝国の世界制覇時代に世界中に広めた文化のひとつでもあります。現在でも愛好家の間では“スペインの特に高品質な白ワイン”という認識に変わりはありませんが、1970年代から80年代に大量生産が行われ、シェリーの地位は大きく損なわれてしまいました。日本でもあまり知られていないのはこの当時のことが影響していると考えられ、アンダルシア地方におけるシェリー用のブドウ栽培面積は1990年頃に比べ1/4近くまで減少していることも事実です。

私はもともと、日本人には多様な食生活やアルコール度数などからもワインが向いていると考えているのですが、シェリーもより楽しまれればいいと思っています。その理由をいくつか挙げると、前述したように通常のワインに比べ、劣化しにくいため少しずつ飲んでも問題がなく、レモンなどの柑橘やソーダやトニックとの相性もよく通常15%程度のアルコール度数を薄めて楽しむこともできるからです。

シャンパーニュとシェリーはどちらも通常のワイン生産の道を歩まず、国内でも無類の個性を表現した白ワインであること、どちらも白亜の土壌で育まれ、イギリスが世界に広めたという多くの共通点がありますが、日本での楽しみ方という点では、シェリーは大きな余地があるように思えるのです。

下の「マンサニーリャ」は、海沿いのサンルカール・デ・バラメダでは冷たい海風の影響で厚いフロールが一年中保持されるため、フィノのなかでも特に薄い色調でフレッシュな味わいが特徴です。


Emilio Lustau(エミリオ・ルスタウ)
「DO Sanlúcal de Barrameda Manzanilla Papirusa(DO サンルカール・デ・バラメダ マンサニーリャ・パピルーサ)」
実勢価格2600円前後
輸入元=ミリオン商事