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じっくり、より確実に治すには?アレルギー専門医が解説する
「花粉症」治療の新常識

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日本気象協会の発表によると、今年の花粉は昨年よりも早く飛散が始まり、2月末日時点で九州から関東地方ではすでに花粉の量が「非常に多い」レベルになっています。

日頃からマスクを着用していても、花粉を完全にブロックすることは難しく、すでにくしゃみや目のかゆみ、鼻水の症状に悩まされている人は少なくないでしょう。外気から逃れようとしても、オフィスや飲食店、出先では常に窓が開けられているご時世です。また、新型コロナウイルス感染症が飛沫感染をするため、くしゃみにも細心の注意が必要です。

そこで、今からできる花粉症対策について、アレルギー専門医でハピコワクリニック五反田の院長・岸本久美子先生にうかがいました。

 

日本人の3人に1人が花粉症?
発症の低年齢化が止まらない

花粉症とは、「花粉が原因で起こるアレルギー性鼻炎のこと」です。厚生労働省の調べによると、なんらかのアレルギー性鼻炎の症状に悩まされている人は2008年時点で約4割という結果が出ています。その後もアレルギー性鼻炎は年々増加しているとか。

「下の資料では2008年までの数値しか発表されていませんが、それ以降も、花粉症の発症数は増加を続けています。花粉症にかかる要因は体質と環境が影響しますが、食事の欧米化、不規則な生活や過度の飲酒などによる免疫力の低下と、スギなどの花粉量が増加していることや、温暖化による気温上昇で花粉の飛散量が増えていることなどがあります。最近は、未就学児でも花粉症にかかるケースも増えていますね。低年齢での発症は日常生活への支障が出やすいので、早めの治療と免疫力を上げる生活習慣を心がけていくことが必要です」(ハピコワクリニック院長・岸本久美子先生、以下同)

出典:「患者さんに接する施設の方々のためのアレルギー疾患の手引き<2020年改訂版>」厚生労働省管轄のアレルギー情報センター事業作成 https://www.jsaweb.jp/huge/allergic_manual2020.pdf
出典:「患者さんに接する施設の方々のためのアレルギー疾患の手引き<2020年改訂版>」厚生労働省管轄のアレルギー情報センター事業作成
https://www.jsaweb.jp/huge/allergic_manual2020.pdf

 

花粉症の症状レベルを見極め、
早めに治療するのがポイント

日本では、花粉症などのアレルギー性鼻炎を症状の程度やくしゃみ、鼻水などの病型によって、「無症状」「軽症」「中等症」「重症」「最重症」の5段階に分類しています。表を参考にしながら、自身の花粉症レベルをチェックしてみましょう。

「花粉症の治療は、花粉が飛び始める時期や症状が少しでも表れた初期の段階で薬物治療を行うのが効果的です。当院では、前年までの症状も参考にしながら、患者さんの花粉症レベルに沿った治療を行っています。受診される患者さんの大半は『中等症』レベル以上で、1日6〜10回のくしゃみや鼻水が出たり、鼻づまりで口呼吸が必要な状態だったりします。処方薬でも市販薬でも、早めに飲用することで、花粉症の症状緩和の効果が出やすくなります」

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出典:厚生労働科学研究「コメディカルが知っておきたい花粉症の正しい知識と治療・セルフケア」(監修:日本医科大学耳鼻咽喉科助教授 大久保公裕) https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan-qa_a.pdf
出典:厚生労働科学研究「コメディカルが知っておきたい花粉症の正しい知識と治療・セルフケア」(監修:日本医科大学耳鼻咽喉科助教授 大久保公裕)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan-qa_a.pdf

 

新型コロナウイルスの影響で早期治療の傾向に

昨年はスギ花粉の飛散が少なかった上に、花粉時期と新型コロナウイルスの世界的な広がり時期が重なり、花粉症で受診される患者数が例年よりも減少したという岸本先生。今年の傾向はどうでしょうか?

「今年は例年並みの患者さんが来院されていますね。しかも、昨年の年末あたりから花粉対策を始める方もいて、早期の対策をされる傾向が見られました。新型コロナウイルスへの感染対策が必要になるため、くしゃみ、鼻水などの症状をできるだけ抑えようという思いから、積極的に受診される方が増えたようです。薬の効果をより高く得るには、症状が出始める2週間前からの処方がオススメです。もちろん、症状が出てからの治療薬も飲まないよりも飲んだ方がよいですが、早期対策が効果的ということは覚えておきましょう」

 

花粉症治療「舌下免疫療法」とは?

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最近、花粉症治療として「舌下免疫療法」の人気が高まっているようですね。

「ここ数年、徐々に浸透してきた舌下免疫療法ですが、昨年は特に治療希望者が増えました。コロナ禍での花粉症状を抑えたいという理由も影響しているようです。舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法ともいい、体にアレルゲンとなるスギ花粉を慣らしていくことで、症状をやわらげたり、根本的な体質改善を行ったりする方法です。スギ花粉を含んだ錠剤(シダキュア)を毎日舌の下に入れて吸収することで、スギ花粉の症状が緩和されていきます。

ただし、スギ花粉の飛散時期は、シダキュア服用後に体調の変化が起こるおそれがありますので、治療は始められません。今年の花粉時期が終わってから行う治療法になります。月に1回の通院で3〜5年ほどかかりますが、服用を始めて数ヵ月でも、花粉症の症状が軽減される方が多く、80%程度の方に効果がみられています。花粉症を完治したり、長期に渡って花粉症から解放されたりする可能性が高く、注目の治療法です。5歳以上の小児から始められますので、お子さんの治療に関しても医師にご相談ください」

 

治療以外になにができる?
花粉症対策に効果的なセルフケア

花粉症に苦しむ人がいる一方で、それらの症状とは無関係の人もいます。この差はどうして出てくるのでしょうか?

花粉にさらされる環境にいる方が発症しやすいですし、アレルギー体質のある方や家族が花粉症にかかっている場合も発症しやすいといえます。さらに、花粉症を悪化させる要因として挙げられるのが、睡眠不足、ストレス、喫煙、飲酒、不潔な生活空間や受診の遅れなどがあります。遺伝や体質、生活習慣や食事内容など、さまざまな要因が複雑に関係していると言えるでしょう。

食べ物といえば、ヨーグルトなど、特定の食品を摂取することで症状が緩和するという説もありますが、発症している症状を押さえ込むほどの効果は得られないと思います。ただ、腸内環境の改善が体の免疫力を上げるので、結果的に効果があるという考え方はできます。現在、腸内環境の研究は進んでおり、ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれるプロバイオティクスの働きが応用されて、新たな治療方法に繋がる可能性はありますね。ただし、加糖ヨーグルトの摂りすぎは生活習慣病につながりますし、特定の食品やサプリメントに頼ると副作用の心配もあるので、注意してください。ビタミンの豊富なバランスのよい食事と規則正しい生活を心がけるようにしましょう

 

花粉症用の市販薬を飲む際に注意することは?

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花粉症の症状が出ているときに、手軽に対処できるのが市販薬です。この時期はドラッグストアの店頭に、花粉症用の薬がたくさん並びますが、どのようなことに注意して選べばいいのでしょうか?

「花粉症の治療薬として、くしゃみや鼻づまりに効果のある第1世代抗ヒスタミン薬は眠気や頭痛などの副作用が出やすいので、飲むタイミングには注意が必要です。鼻づまりに効果的な点鼻薬の一種である血管収縮薬は、スプレーした直後は心地よいのですが、後に鼻づまりを悪化させてしまう場合があります。市販薬は複数の薬効成分が配合されており、年齢や体重、体質の違いなどを考慮できないこともあり、病院で処方される薬よりも効果効能が少ないといえます。また、気管支喘息などの持病や、妊娠・授乳中の方は使用できないものもあるので、用法用量を守り、適切な期間服用するようにしてください。子どもに市販薬を飲ませる場合は、小児用が望ましいです。市販薬が効かない、または副作用の不安があるときは、受診して処方された薬を服用しましょう」

 

花粉症の重症度レベルで
治療薬が変わるわけではない

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花粉症の重症度によって、飲むべき薬の種類は変わるのでしょうか?

「必要な治療薬の量や服用期間は変わりますが、花粉症を引き起こしている要因は同じなので、処方薬も基本的には変わりません。花粉症を起こす化学物質には大きく分けてヒスタミンとロイコトリエンの2つがあります。ヒスタミンは、鼻の粘膜にある知覚神経を刺激し、くしゃみや鼻水を起こしたり、目のかゆみを引き起こしたりします。それらを防ぐ薬が抗ヒスタミン薬です。第1世代抗ヒスタミン薬は1940年代からアレルギーの薬として使われてきましたが、眠気や口の乾き、胃腸障害やめまい、頭痛などの副作用が出る場合もあり、服用には注意が必要でした。1983年以降に発売された第2世代抗ヒスタミン薬は、眠気が起きにくいという特徴があります。そのほかの副作用に関しても第1世代に比べて大幅に軽減されています。最近よく売れている市販の薬は第2世代抗ヒスタミン薬が使われているものが多いですね。ロイコトリエンは血管を拡張させることで鼻の粘膜が腫れて鼻づまりを起こします。こちらの治療には、抗ロイコトリエン薬の『抗LTs薬』や鼻噴霧用ステロイド薬を使用します」

 

ここまで、アレルギー専門医の岸本先生に花粉症の実態と治療法などについて解説いただきましたが、次のページでは手軽に日常生活へ取り入れられる花粉対策グッズをピックアップします。