片付けがうまくいくポイント
続いて、収納棚や引き出しへの片付けをどのようにしたらいいか、ポイントをまとめました。
1. 収納スペースに入らないものは諦める
収納したいものが決まったら、どこに何を置くのが便利かを考えていきます。このときに大切なのは、“収納場所を多くとる”のではなく、“決めた場所に入るだけのモノを収納する”というルールを作ること。
「生活していくなかで、どうしても荷物は増えていきがちです。でも、場所は増えませんよね。購入前に、本当に必要かどうか、どこに置けばよいかなどを入念に考えてから買うのがいちばんですが、今あるモノも、すべてを収納しようとしないのがいいでしょう。ここに収納する、という場所を決めたら、そこに入る分だけを収納し、あとは諦めます。
例えば、カップやコップは引き出しに収納していますが、新しいものを購入したいときはここからひとつ捨てて新しいものと交換します」(整理収納アドバイザー・能登屋英里さん、以下同)
2. 出し入れしやすい片付け方をする
片付けても片付けても元の状態に戻ってしまう、という人は、片付け方自体に問題があります。大切なのは、“元に戻せるように片付ける”、ということ。
「シンク下のお鍋や鍋蓋、フライパン、調理器具などは、ひとつひとつサイズが違うので、取り出しやすく片付けるのが難しいものです。そのときは片づけられても、たとえば大鍋の中に中鍋、小鍋とスタッキングしすぎて、使うときに出すのが面倒だったり戻すのが大変だったりし、気がついたらまたごちゃごちゃ、ということがないでしょうか?
フライパンやまな板などは立てて収納すれば、片手でスムーズに取り出せますから、写真のように細かく仕切りを作って立てるのがいいでしょう。収納グッズは、入れたいもののサイズに合わせて購入してください」
3. 使う頻度に合わせて収納する
一段の幅が広くて奥行きが深い食器棚は、デッドスペースが多くなりがちです。
「食器棚の奥にしまうものは、年に何度かの行事や季節のものなどを入れるようにしましょう。我が家では、手前に普段使いするものを揃えていますが、重ねるお皿の枚数を減らすことで取り出しやすくなるよう、棚の段を狭くしています。こうすることで収納量も多くなりますよね。
ここには、毎日使うものを優先して収納し、来客用の大皿や特別なときにしか出さないワイングラスなど、あまり使わないものはキッチン以外の場所に収納してもいいでしょう。また、同じ大きさのお皿を揃えるように買うときに気をつけることで、収納しやすくなります」
4. デッドスペースにはストックものを入れる
棚の奥などの取り出しにくい場所には、食品やキッチンペーパーといった、消耗品のストックを入れておくのがおすすめだそう。ひとまとめにしておくことで、探したり、ストックしたことを忘れたりしないようにするメリットもあります。
「レトルト食品は、うっかり期限が切れてしまうといったことがないように、賞味期限のラベルを上に向けたりラベリングしたりしておくと便利です。災害のときのためにもレトルトは少し多めに買っておき、必要なとき慌てないよう一か所にまとめておきます。
このとき、箱にいくつか入っているものは、中身がどれだけ残っているかわからなくならないよう、箱から出して収納するのがいいでしょう。ラップやホイルなども安いからといってあまりたくさん買い込まず、ストックのために空けた場所に入るだけにしておきます」
5. 深い引き出しはインサートを入れて二段にする
深さのある引き出しは、この深さを活かしきれずにデッドスペースが生まれやすい場所です。能登屋さんのお宅では、スプレーボトルや清掃に使う重曹やタオルなどを収納しているほか、IKEAのインサートを使って二段に分けていました。
「インサートを使うと、下の段は取り出しにくく見えづらくなるので、あまり出番のないものをしまいます。反対に上段は見えやすくなるので、使う頻度の高いものを収納しましょう。
日本の住宅は、元から収納場所をとって設計をするというより、必要なものを入れて空いた部分が収納、という考え方で作られていますから、収納場所が何かを収納するのに適しているとは限らないんです。シンク下にある水道パイプが出ている収納場所などは、まさに収納しづらいところなので、二段に分けるとしまいやすくなりますよ」
6. 料理本はファイルボックスに入れる
バラバラになりがちな料理本は、ブックエンドなどではなく、ボックスタイプのものに入れると揃い、移動しやすくなります。
「本来は横型に使うボックスなのですが、縦に使うことで、網棚や後ろが抜けている棚にも本を置きやすくなります。このとき、本をぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうと、読みたいときに出しにくく、出したあとも戻すのが面倒になってしまいますから、隙間を空けて収納することを心がけましょう。
何を作ろうかメニューを考えるときにも、このボックスごとソファに持っていって眺めることができるので、使い勝手もいいですよ」
7. ワンステップで何がどこにあるかわかるようにする
箱や瓶に入っているものは、上から見てもわかるようにラベリングするのがいいそうです。カレーを作るのが好きな能登屋さんは、スパイスをひとまとめにしてボックスに入れていました。ボックスごと取り出してシンクに置けば、カレー作りのときに便利ですよね。
「中身がわからないと、いちいち瓶を上げて探さなければなりませんが、ラベリングすることで、ボックスを引き出せばすぐに必要なものを取り出すことができるようになります。何を収納するときでも、“扉を開けて出す”“引き出しを引いて出す”というように、一度の行動だけでモノが取り出せるしまい方をすることで、きれいな空間を保てるのです」
片付けを終えたらうまくいったかチェック!
片付けをした後、モノがどこにあるかわからなくなったり、モノを取り出すのに何ステップもかかったりするようになった場合は、片付けがうまくいっていないということ。見た目にきれいなのも大切ですが、片付けしたことによって使いやすくなったかがポイントです。
「片付けたあとに“使いやすい”と感じたら、片付けが成功した証拠。逆にそうでなければ、どうすれば自分が使いやすくなるかを考え、根底から見直すことも大切です。
たとえば我が家では、シンクが一槽なので、中にスポンジや三角コーナーを置いてしまうと、狭くなってしまい、洗い物がしづらくなるんです。そこで、三角コーナーを使うのをやめ、スポンジやブラシは吊るして干すようにしました。“シンクには三角コーナー”という既成概念を捨てたことで、シンク周りが掃除しやすくなり、洗い場も使いやすくなり、汚くなりがちなスポンジもきれいに保てるようになりました」
ひと通り片付けることはできても、実はそれがうまくいったか見直すことが大切。上手な片付け方とは、“何度も片付けなくて済む空間”ということでもあるのです。使う頻度から収納場所を決めて、デッドスペースも有効に利用できる片付け方をしてみましょう。
Profile
整理収納アドバイザー / 能登屋 英里
住宅収納スペシャリスト。52㎡(1LDK+WIC)のマンションを自身でデザインとリノベーションし、夫と3歳の娘と3人暮らしをしている。アパレルメーカーのディスプレイをしていた経験を生かし、インテリア・整理収納サービス、リノベーション前の相談などを行っている。自宅セミナーも不定期で開催。Instagram
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取材・文=吉川愛歩 撮影=安藤佐也加 編集協力=Neem Tree