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ローレイアウトの“床座生活”が叶う!インテリアコーディネーターが実践する、
和室暮らしの魅力と洗練された和空間の作り方

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「和室」に対して、どんなイメージを抱いていますか?「古臭い」「野暮ったくておしゃれに見えない」「築年数が古い物件に残っているもの」など、ちょっとネガティブな印象を持っている人も多いはず。なかには「自宅に和室があるけれど、どうやって活かしたらいいのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。

そこで、二級建築士でインテリアコーディネーターの久保貴美さんに、再評価したい“和室の魅力”と、誰でも真似できる和室のインテリアコーディネート術を伺いました。自宅にも和室を持つ久保さん。おしゃれ空間に変貌を遂げたマイ和室もたっぷり紹介いただきます。

【ポイントを45秒の動画でチェック】

そもそも「和室」とは?

日本の古き良き文化の一つである和室。最近は、小上がりのモダンな和空間や、より簡易的に“和”を取り入れられる置き畳などもありますが、一体どのような部屋を「和室」と呼ぶのか、基本的な要素を整理しておきましょう。

「時代とともに変化した部分もありますが、今も昔も変わらない和室の要素は5つ。『畳』『襖(ふすま)』『障子』『長押(なげし)』『押入れ』です。マンションでも一戸建てでも、和室と呼ばれる部屋には大体これらがあります」(久保貴美さん、以下同)

和室を構成する要素の一つ「長押」とは、部屋の壁面上部に取り付けられた横木のこと。部屋を一周するようにぐるりと取り付けられており、柱と柱をつなぐ補強の役割などがある。

“暮らしやすさ”を高める、
和室がもつ4つのメリット

奥行が深いだけではなく、上下段に分かれていたり、上部に枕棚という小さな棚があったりと、スペースごとに収納するものを分けられる点が魅力。

和室が古くから受け継がれているのには、それなりの理由があります。久保さんに、再評価したい機能面のメリットについて教えていただきました。

1.部屋が広く感じられる

和室の一番の特長は、畳にごろんと寝転がれること。地べたにそのまま座ることができる分、目線が低くなり、天井が高く感じられます。昨今話題の“床座(とこざ)生活”などの暮らしにもピッタリです。

2.癒し効果がある

“すぐに寝転がれる環境”という点が、心をふっと緩ませてくれるのだとか。

「私も普段、和室で仕事をしているのですが『なんだか疲れたな、行き詰まったな』と感じたら、そのまま横になってリラックスします。すぐに横になれる環境があるからこそ、根詰めすぎずに作業できていると感じます」

また、木や草、和紙などを使って作られる和室では、目、鼻、肌で自然を感じることができるそう。

3.調湿・防音効果がある

自然素材が多く使われているため、調湿効果が抜群。なかでも畳に使われるイグサが、部屋の湿度に応じて、湿気を吸ったり出したりしてくれます。また、畳にはクッション性があるので、音が響きづらく防音効果も期待できます。

4.収納力がある

一般的に、和室の収納は引き戸の押入れになっています。押入れは寝具一式を入れることが想定されているため、洋室のクローゼットよりも奥行きが深く、より多くのものを収納できます。

最近の和室はデメリットが解消されている⁉

「掃除がしづらい」「客間以外にどう使ったらいいのか分からない」など、和室=使い勝手が悪いもの、と思っている人も少なくないでしょう。でも、もうその考えは古いかもしれません。久保さんによると、最近の和室は洋室にはない良さを残しつつ、どんどんと使いやすくなっているのだとか。久保さんに、勘違いを解消していただきましょう。

勘違い1.メンテナンスに手間が掛かる

畳と言えば、使っていくうちにイグサが擦り切れ、定期的に張替えが必要なものとされてきました。しかし、最近の和室の主流はイグサ畳ではなく和紙や樹脂の畳。(和紙畳は)より耐久性に優れているため、メンテナンスの手間も格段に軽減されています。

勘違い2.使い道がない

実は久保さんのもとにも「客間にはしたものの、あまりお客さんが来ない……。でも違う使い方も思い付かない」という相談がよく寄せられるのだそう。

「使い方に困っている方の多くが、“あまり畳の上に家具を置いてはいけない”という先入観を持っています。しかしそんな決まりはありません。チェアでもテーブルでもベッドでも、好きな家具を置いていいんです! 脚の太い家具を選んだり、下にラグを敷いたりすれば、畳が凹む心配もありません。家具を置いて良いという発想さえあれば、ぐっと活用の幅が広がるはずです。

また、畳のクッション性によって、フローリングよりも安全に暮らすことができるのも大きな特長です。子ども部屋にも、お年寄りの寝室にも使える汎用性の高さが魅力です」

勘違い3.野暮ったく見える

畳や襖の古風な雰囲気のせいで、インテリアが野暮ったくなってしまいそうな和室。ところが、久保さんは「コーディネート次第でいくらでもおしゃれに見せることはできる」と話します。

「最近は半畳のフチなし畳やカラーバリエーション豊富な襖紙なども出てきています。いずれも洋風に寄った和室に仕上がるため、隣接する洋室やおしゃれな家具とも馴染みやすいんです」

最近の和室によく使われている半畳のフチなし畳。床面がチェックのようなモダンな見た目になるのが特徴。

野暮ったく見えない!
和室のインテリアコーディネート

ここからは、和室の魅力を最大限に活かすインテリアコーディネートについて紹介します。和室のコーディネートというとダークな家具でまとめた「和モダン」が代表的ですが、久保さんによると、今のトレンドはナチュラルカラー(白)やベージュなど、明るい色でまとめるコーディネートなのだとか。

「ポイントは“和と洋の掛け合わせ”です。和は畳や襖、障子など、和室にある要素で十分足りているので、家具やファブリックなどで追加する必要はありません。むしろ和を意識してしまうと古風な印象に寄りすぎてしまうため、洋の家具やファブリックを選ぶようにしましょう」

では、一体どんな洋の家具を足し、どういったテイストにまとめれば良いのでしょうか? 久保さんに、自室のお写真とこだわりポイントを交えながら、詳しく教えていただきました。

1.ベースはナチュラルに

無垢材の天板にアイアンの脚の付いたデスク。「メインが自然素材であれば、部分的に違う素材が使われている家具でもOK」

「木や草などが多く使われている和室は、ラタンなどの自然素材との相性がバッチリ。シンプル且つナチュラルな雰囲気の家具をインテリアのベースに据えるのがおすすめです。

それから、和室に使う家具を選ぶ際に気を付けてほしいのが高さです。天井を高く感じられる点が和室の特徴ですが、背の高い家具があるだけで一気に圧迫感が……。どうしても背の高い家具を使いたい場合には、入口から死角になる位置に置き、できるだけ圧迫感が出ないようにしましょう

ラタンの鉢カバー。「観葉植物があるだけでなんだかおしゃれに見えるので、メインの家具の一つとしてグリーンを取り入れるのもおすすめです」

2.アクセントとして好みのテイストを加える

ラタンチェアとキリムのクッション。「アクセントとなる小物類は、色のトーンを合わせるのがポイントです。インテリアに一体感が出ます」

「すべてをナチュラルな雰囲気にすると地味になりすぎてしまうので、アクセントとして小物などで色を入れるのがおすすめです。その際、自分の好みのテイストを取り入れることで、ぐっと自分らしいお部屋になるはずです。和室と相性が良いのは、アジアン、ハワイアン、アフリカン、北欧など、自然を感じられるテイスト。逆に、ヨーロピアンなどのクラシカルなテイストはバランスが取りづらいため、控えたほうが良いかもしれません」

部屋の一角にマスキングテープで貼られた壁紙のサンプルやポストカード。「和室とは縁遠いと思われがちなアートも、アクセントとして取り入れればまったく問題ありません」

3.自然を感じられる空間をつくる

あえて短めに取り付けられたカーテン。「家の前を通る人の視線を遮りつつも、外に置いた植物は隠さない、まさに雪見障子のようなカーテンです! 障子を残し、和洋折衷のような雰囲気にしているのもポイントです」

「和室の多くは、窓が掃き出し窓になっています。掃き出し窓は、光がたっぷり入って明るくなる上、外の自然をめいっぱい感じられる点が大きな魅力です。お部屋の内外にある自然と生きる、というのが和の基本の考え方なので、大きな窓を活かすことで、より和室の魅力が引き立つお部屋になるはずです。

また、和室の窓には障子が使われていますが、『洋風の家具の中にあると、なんだか違和感がある』という方は、カーテンやブラインドなどに付け替えても良いと思います」

窓向きに配置された作業用デスク。「作業中も外の景色が感じられる配置にしています」

最後に、久保さんは「子供部屋や旦那さんの書斎部屋はあるけれど、なぜか自分の部屋はないという女性が多いと思います。そういう方にこそ、和室を活かしてほしい」と話します。

「使い道が分からない、という理由で和室が空き部屋になっているのは本当にもったいないです。和室の古典的なイメージを一旦捨て、趣味や仕事、リラックス空間など、自由に活用してみてくださいね」

Profile

二級建築士・インテリアコーディネーター / 久保貴美

二級建築士・インテリアコーディネーター / 久保貴美

ハウスメーカーでの設計アシスタント、マンションの専属インテリアコーディネーター、不動産会社を経て、2009年フリーランスとなる。個人邸やモデルルームのコーディネート、店舗の装飾&ディスプレイなど、空間づくりに関わるあらゆる分野で活動中。大阪芸術大学短期大学部 空間演出デザインコースにて、非常勤講師も務めている。
HP https://inspi55.com/

取材・文=横塚瑞貴(Playce)