夏の暑さが年々苛烈さを増しています。となると、食べたくなるのはやはり、ひんやり冷たい“かき氷”。近年のブームで老舗に加えさまざまな専門店が増え、メニューも進化しています。
2023年のかき氷トレンドは? 自宅で絶品かき氷を作れるレシピと、かき氷専門店の激戦区・東京都内のおすすめ店は? 年間1600杯以上のかき氷を食べ歩く“かきごおりすと”で、かき氷の魅力を広く伝える活動を行う一般社団法人日本かき氷協会代表・小池隆介さんに教えていただきました。
CONTENTS
いつからなぜブームに? 2023年のトレンドは?
フルーツをふんだんに使った高級かき氷から、ふわふわ食感のかき氷、台湾風や韓国風まで、都内にはさまざまなかき氷店が軒を連ねます。そもそも昨今のかき氷ブームが広がったきっかけは?
「かき氷は、東日本大震災をきっかけに電気を使わず涼をとる方法として注目され、約10年ほど前からブームになっています。暑い夏に体を冷やせておいしいだけでなく、色鮮やかでダイナミックな姿が目を引く、“こだわりのかき氷”を提供するお店が増え、SNSを通して人気が拡散していきました。この熱狂的なブームは落ち着き、10年かけて多くの人たちにその魅力が浸透したことで、『夏には、おいしいかき氷を食べに行きたい!』という感覚が定着しつつあると感じています」(一般社団法人日本かき氷協会代表・小池隆介さん、以下同)
人気の裾野が広がった現在は、個性豊かなかき氷を楽しめるようになっています。
「かき氷には、こうでなければならないという決まりはありません。作り手が独創性を発揮できる自由な食材です。近年は専門店だけではなく、異業種からのかき氷店参入もあり、独自にアレンジされたおもしろいかき氷が味わえるようになりました。
2023年の人気は、トマトやバジル、とうもろこしなど夏野菜を使ったかき氷や、果物の甘味を最大限活かして砂糖の添加は最小限にとどめるヘルシー志向のかき氷、農薬や化学肥料をいっさい使わずに栽培された果物や野菜から作られるオーガニック志向のかき氷です。
また、ホイップクリームやふわふわした食感を楽しめるエスプーマにオリジナルのクッキーやナッツ、フルーツなどをあしらい、氷の上に物語を感じられるようなかき氷や、フルーツをたっぷり使い、蜜やフルーツの色合いにグラデーションやコントラストを持たせ、より華やかになったデコラティブなかき氷も人気です」
高級かき氷専門店も続々と出現
ホテルでは1杯3000円〜5000円もする高級かき氷が販売され、専門店でも2000円以上するかき氷も珍しくありません。
「以前は1000円以下のかき氷が主流でしたが、お店によって値段の幅も広がっています。もちろん人件費や素材の高騰なども高価格化の要因のひとつですが、かき氷は作り置きできないため、その場所に行かないと食べられません。提供されたその瞬間を楽しむ“体験としての要素もあるので、店主の『提供してから食べ終わる瞬間まで、存分に楽しんで欲しい』という思いも強いように感じます。その思いが独自性に磨きをかけ、進化を続けるうちに、だんだんと値段の幅も広がっていったのではないでしょうか」
初心者でも再現できる!
家でふわふわのかき氷を作る4ステップ
お店で食べた味が忘れられず、自宅でも、ふわふわのかき氷を作ってみたい! そんな願いを叶えるため、おいしく作るポイントを教えていただきました。
Step 1.氷を作る
・透明で面の大きい塊の氷を作る
「バラ氷やロックアイスなどの氷は、刃に対してデコボコなため、ジャリジャリと粒の粗い氷ができてしまいます。かき氷には、刃に均一に氷があたるよう、かき氷機にあった面の大きい塊の氷が適しています。面が広い円柱型の製氷器を使って、氷を作りましょう。製氷器は100円ショップなどでも手に入ります」
・氷をゆっくり作る
「氷を薄く削るには、表面が滑らかな氷であることが大事です。自宅で作った氷のなかで、真ん中が盛り上がった氷を見たことはありませんか。あれは急速に氷が作られている証拠です。急速に冷やされた氷は、結晶が小さく溶けやすく、表面に凹凸がある為、均一に削るのは難しいです。反対にゆっくり凍らせた氷は結晶が大きく均一に凍り、溶けにくく透明で削りやすいのです。ゆっくり凍らせるためには、製氷器をプチプチなどの梱包材や新聞紙で包むとよいでしょう。このとき直接冷凍庫に入れず、底がつかないように割りばしなどで橋渡しをした上に乗せ、上下前後左右から凍らせる方法も有効です」
Step 2.氷を削る
・ゆっくり溶かし柔らかくなった氷をリズミカルに削る
「冷凍庫から出したばかりの氷は、冷たく固すぎて、刃が当たると引っかかったり、氷が欠けたりしてうまく削ることができません。一度常温に氷を出し、表面が溶けた状態、つまり製氷器から自然と氷が出てくるまで焦らずゆっくり溶かします。家庭で使うかき氷機は、鋳物のかき氷機のように、重さがあり安定してぐらつかないものがおすすめ。氷を削っている最中の刃が、ぐらついて離れたりしないよう安定した場所で行うことが大切です。準備ができたら、一定の速さでリズムよく削りましょう」
Step 3.器などを準備する
・器もソースも冷たさにこだわる
「かき氷は、できたてがおいしいもの。その瞬間が長く続くよう、器やかけるソースなどを冷やしておくことは鉄則です。器を冷やし、かけるソースは冷やしておきましょう」
Step 4.盛り付ける
・自分流でとことん楽しむ!
「かき氷は、どんな食材とも合う、懐の深い万能素材です。自分の好きなものをトッピングして楽しみましょう。好きなクッキーや、ナッツを乗せたりしてもいいのです。友人同士で食材を持ち寄って、さまざまバリエーションを既成概念にとらわれず、楽しんでみてください」
小池さん直伝!
家にある食材で作るおすすめフレーバー
■ 夏バテ対策にも効果的なビタミン・カリウム豊富な「旬フルーツかき氷」
【材料】
・氷…適量
・カルピス原液…適量
・旬のフルーツ…お好みの量
旬のフルーツとカルピスで作ります。「カルピスはかき氷シロップとしても定番ですが、そこに旬のフルーツをのせてみてください。夏の旬のフルーツといえば、すいか、桃、ぶどう、メロン、マンゴーなど。色どりもキレイですよね。メロンやすいかは丸くくり抜くなど、盛り付けにも工夫すると見た目にもおいしいかき氷になります。旬のフルーツのさわやかな甘味と、酸味の利いたカルピスは相性抜群です」
■ ほろ苦さが大人の味「コーヒーかき氷」
【材料】
・氷…適量
・濃いめのコーヒー…適量
・ガムシロップ…1個
・生クリーム…お好みの量
・あんこ…お好みの量
コーヒー、生クリーム、あんこで作ります。「インスタントコーヒーを濃いめに作り、冷蔵庫で冷やします。作り方は、器の下にガムシロップや生クリームを入れてかき氷を盛り付け、最後にコーヒーを上からかけるのもよし、かき氷を盛り付けたあとにすべて上からかけるのもよし、お好みでためしてください。かける順番によって、味の変化も楽しめます。生クリームの代わりに、ミルクや、ポーションクリーム、練乳、バニラアイスなど、お好みのものをのせても。トッピングには、あんこがおすすめ。和菓子屋さんでは、持ち帰り用のあんこを販売しているところも多いです。和菓子屋さんのあんこをトッピングすれば、ワンランク上のかき氷に早変わり! コーヒーも専門店のものを利用してとことん味にこだわってもいいですね」
かきごおりすとオススメ!
都内の人気かき氷店 7選
東京都は、伝統あるあんこを使った和菓子系のかき氷や、クリームを使った洋菓子系、旬のフルーツをふんだんに盛り込んだ手作りソースのかき氷など、個性豊かなお店が多数存在する激戦区。かき氷好きにはたまらないエリアです。小池さんにおすすめを教えていただきました。
[浅草] 浅草浪花家……たい焼きの名店による絶品あんこ
「あさやけ」1000円(税込)
「たいやきの名店『浪花家総本店』から暖簾分けされた『浅草浪花家』は、あんこと手作りシロップにこだわったかき氷を提供する行列店です。看板メニューは、富士山の朝焼けをイメージした『あさやけ』。丁寧にふんわりと削った氷の上に、あっさりとしたミルクをたっぷり、自家製の鮮やかないちご蜜で天頂部を染められた、見た目も美しいかき氷です。粒あんとあっさりしたミルクという王道の組み合わせは、いつ食べても飽きないおいしさです」
浅草浪花家
所在地=東京都台東区浅草2-12-4 もっこ
TEL=03-3842-0988
[谷中] ひみつ堂……天然氷使用など素材にもこだわり
「宮古島マンゴー三昧」2600円(税込)
「一年中、四季折々の絶品かき氷を楽しめる谷中の名店です。旬の素材を使った蜜をたっぷりとかけるのが特徴で、開店時よりかき氷界のトップを走り続けています。天然氷を使い、都内でもめずらしい手動式機械から削られる氷は、やわらかくふんわりとした舌触りで職人技がキラリと光ります。店主の森西さん自ら、全国を駆け巡りかき氷に合うフルーツを発掘しています。宮古島で収穫してくるマンゴ—を使ったかき氷も絶品ですよ」
ひみつ堂
所在地=東京都台東区谷中3-11-18
TEL=03-3824-4132
[根津] 芋甚……地元に愛される日常的に通いたくなる店
「黒蜜きな粉」680円(税込)
「100年以上の歴史を持つ甘味処で、落ち着いた雰囲気で居心地が良く、地元の方々に愛されてきた名店です。氷あずき等で使われるあんこや黒蜜、アイスクリームは、どれも自家製。先代から受け継ぐ伝統あるレシピでつくったシロップが自慢で、『黒蜜きな粉』や『宇治金時』が人気です。氷はきめ細かくさらさらとしていて日常的に食べたくなるおいしさ。お値段も良心的で、近所にあったらうれしいお店です」
芋甚
所在地=東京都文京区根津2-30-4
TEL=03-3821-5530
[調布] ぱくぱくくもくま堂……くまをかたどって心躍るかわいさ!
「ずんだみるくにゴルゴンゾーラなくまさん」1500円(税込)
「くまの顔の形をしたかわいらしいかき氷が人気のお店です。写真からも愛くるしさが伝わりますが、実物を目の前にすると食べるのがもったいなくなってしまうほどです。クリーム系が得意で、かわいいだけでなく、味もしっかり計算されています。おすすめの“ゴルゴンゾーラハニー”には、塩気のあるチーズに風味の良いはちみつ、いちじくのとろりとした果肉にプチプチした種の食感があわさりおいしく、新しい味の発見を楽しめます。なかにはくるみも隠れていて、食べ進めても飽きない魅力があります」
ぱくぱくくもくま堂
所在地=東京都調布市調布ケ丘2-1-8
TEL=070-4333-7264
※事前予約要
[調布] 甘味an&……手づくりのおいしさを心ゆくまで!
「甘夏ざんまい」1400円(税込)
「テイクアウト専門の『あずきや安堂』の姉妹店で、ゆっくり手作りの和菓子を楽しんで欲しいとの思いから開店されました。あんこを使用したかき氷が名物で、あんこは調布で大変人気のあった今川焼の門外不出のレシピを再現した夏の期間限定メニュー“甘夏ざんまい”もおすすめ。無農薬にこだわった甘夏だからこそできる皮までつかった調理で、甘夏を大胆にトッピング。さっぱりとした甘味と酸味、ほろ苦さが人気です。2023年で一周年を迎えるオープンしたばかりのお店で、まだまだ穴場スポットです」
甘味an&
所在地=東京都調布市布田1-34-1 永祥ビル1F
※季節によってメニューが変わります。くわしくはInstagramを確認してください。
[目白] 志むら……たっぷりかかったソースが贅沢
「生いちご」1250円(税込)
「かき氷好きなら、知らない人はいないほどの有名店です。盛り付けが特徴的で、氷がつぶれてしまわないよう崖のように高く盛り付けた氷に、ソースをこれでもか! とあふれんばかりにかけた断崖絶壁のような見た目が、贅沢さを物語っています。いちごは、静岡県から取り寄せたこだわりの『紅ほっぺ』。ソースだけでなく、果肉もゴロゴロと入っています。ほかにも、上品な甘さをたっぷり楽しめるこしあんを使った『白玉』もおすすめです」
目白 志むら
所在地=東京都豊島区目白3-13-3
TEL=03-3953-3388
※事前予約要
[八重洲] 東京八重洲堂……かきごおりすとプロデュースの期間限定店
「和三盆すだち」1500円(税込)
「私自身が今、食べたいかき氷をプロデュースする期間限定のお店です。かき氷が好きなだけでなく、徳島の名産品である和三盆×すだちのフレーバーや、沖縄産シークワーサーをシンプルにかけたかき氷、産地を限定したお茶や果実のかき氷など、食欲が落ちてしまう夏にぴったりなメニューがたくさん揃っています。暑い夏に涼を取れ、かき氷をゆっくり楽しめて、夏バテする夏に栄養も摂取できるかき氷をぜひ召し上がってください」
かき氷コレクション 東京八重洲堂
所在地=東京都中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲2F
出店期間=7月20日(木)〜9月4日(月)
「最近はかき氷の価格も上がり、人気店は長蛇の列、人によっては敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、東京都内だけでも100軒以上の提供店があり、人気の店舗も時間をずらせば入れるなどまだまだ楽しむ方法はあります」と小池さん。また、旬のグルメとして健康面でも魅力的だと力説します。
「栄養豊富な旬の食材も使われ水分もたっぷり採れるなど、暑い夏に食べる食材としても理にかなっています。お店では店主の独創性を味わい、家庭ではご自分の好きな組み合わせを考えてみるなど、もっともっと気軽にかき氷を楽しんでみてください」
Profile
一般社団法人日本かき氷協会 代表 / 小池隆介
15年以上前からかき氷に魅せられ、全国津々浦々かき氷を食べ歩いている。年間で食べるかき氷は1600杯以上。一般社団法人日本かき氷協会を設立、協会では東京ミッドタウンの「かき氷コレクション」「かき氷スタンプラリー」などを手がけ、かき氷の魅力を広める活動を行っている。自身でも、世田谷と前橋にてかき氷店『かしや』と『シロヤ』を経営。全国のかき氷店を調べられる、かき氷ポータルサイト『かきごおりすと』の運営も行う。
かきごおりすと
取材・文=加賀美明子(Neem Tree)