都会の喧騒を逃れ、おいしいお茶に癒やされる「櫻井焙茶研究所」
表参道駅B1出口を出てすぐ。レストランやショップ、ギャラリーなどで構成される「スパイラルビル」の5階に「櫻井焙茶研究所」はあります。
お店がオープンしたのは今から6年前の2014年。所長の櫻井真也さんは、もともとバーテンダーの経歴を持つお酒のエキスパートでしたが、その後和食店や和菓子店のマネージャー業を経て、お茶の魅力に目覚めたのだそう。以来、“研究所”の名の通りお茶の味わいを研究し続け、その奥深さを提供しています。
店内は、茶葉や茶器の購入のほか、試飲(有料)もできるスペースと、カウンター席でゆっくりとお茶とお酒、和菓子を楽しめる茶房に分かれています。日中は自然光がふんだんに注ぐカウンター席は、夜になると淡い照明に包まれて、バーのような雰囲気に変身。「昼でもおいしいお酒が飲めて、夜でもおいしいお茶が飲める。そんな場所にしたかったんです」と櫻井さんは話します。
お茶の文化を堪能できる「お茶のコース」
メニューは、3種類の「お茶のコース」、お茶と茶酒が楽しめる「お茶とお酒のコース」、お茶とおこわなどの食事が楽しめる「お食事のコース」に加え、好みのお茶とお茶菓子を注文できるアラカルトも用意されています。今回は、「玉露 ブレンド茶 ほうじ茶 お薄 和菓子」のコースをいただきました。
店内では、所長の櫻井さんをはじめ、スタッフの方は白衣に身を包んでいます。そのいでたちは、まさに“お茶の研究者”といったところ。茶器からしっかりあたため、丁寧に一杯ずつ淹れていく様子は、カウンター越しに目の前で眺めることができます。
まずは、35度のお湯から茶葉を蒸らし、ゆっくりと淹れた玉露から。一口飲んでみると、濃厚なうま味と、ほのかな甘みが口の中いっぱいに広がり、豊かな茶葉の香りが鼻に抜けていきます。一煎目と二煎目で、異なる香りと風味を楽しめるのも魅力のひとつ。
櫻井焙茶研究所では、櫻井さん自らが日本各地へ足を運び、茶葉を一つ一つセレクトしているのだそう。ブレンド茶は完全オリジナルで、その季節の旬の果実や花と茶葉をブレンドさせているのだそう。「日本の四季をお茶から感じてもらいたい」と、櫻井さんは話します。今回は、旬のゆずと番茶のブレンドや、旬の金柑を使った冷たいブレンド茶をいただきました。
透き通るような若草色のお茶は、思わず見入ってしまうほどの美しさ。金柑の香りが爽やかで、後味もすっきりとした、飲みやすい一杯です。
淹れ終えた茶葉は、最後はポン酢をかけていただきます。
茶葉の渋みとポン酢の酸味、そして金柑の風味がなんとも美味。ブレンドの茶葉も店頭で販売されているため、自宅で真似してみるのもいいかもしれません。
続いては、ほうじ茶。お茶のコースでは好みの茶葉をセレクトすると、原料の茶葉から焙烙を使って、炒りたての香り高いほうじ茶を淹れてもらえます。
その場で焙煎してもらえるため、浅煎り・中煎り・深煎りと、ローストの加減をリクエストすることも可能。茶葉によって味わいが異なることはもちろん、焙煎の仕方ひとつでも大きく変わります。一杯飲んだら、きっとまた違う一杯を試してみたくなるはずです。
最後は抹茶をいただきます。ここでは、季節に合わせた和菓子も好きなものをセレクトできますが、どれも抹茶の渋みと相性のよい、こだわりのものばかり。思わず目移りしてしまいます。
櫻井さん曰く、お店を訪れる方の約4割は訪日観光客の方。そのほとんどが、初めて本格的な日本茶を体験する方だといいます。間近で見られる点前に、感動を覚える人も多いはず。味そのものだけでなく、その一杯をつくるまでの過程に美しさがあることも、日本茶ならではの魅力なのではないでしょうか。
抹茶から点てられたお薄は、外国人の方や、抹茶にあまり馴染みのない人でも飲みやすい上品な味。香りを楽しみながら、まろやかな味をゆっくりと味わいます。
日本が誇るべきお茶文化の魅力を再確認
種類や茶葉の違いだけではなく、焙煎の加減や、淹れ方ひとつでもまったく違う顔を見せる日本茶の奥深さ。私たち日本人も近年すっかりコーヒー文化に傾倒しつつありますが、古くから愛される日本茶にも、無限の楽しみ方があることを改めて知ることができました。
忙しい毎日の中で“手早く、簡単に楽しめるもの”を求めがちな私たち現代人にこそ、日々の喧騒から逃れ、ゆっくりとお茶を一杯ずつ楽しむ時間が必要なのかもしれません。ぜひ、贅沢な“和”のひと時を体験してみてはいかがでしょうか?
Shop Data
櫻井焙茶研究所
所在地:東京都港区南青山5-6-23 スパイラルビル 5F
電話番号:03-6451-1539
営業時間:【茶房】11:00〜23:00(土日祝~20:00) 【茶葉販売】11:00〜20:00
定休日:ビルに準ずる
http://www.sakurai-tea.jp/
取材・文=藤間紗花 撮影=柴崎まどか