鮮やかな色調が印象的な「Rollbahn(ロルバーン)」。表紙を見れば、「あ、知ってる!」と思う人は多いのでは? 一見、海外メーカーのおしゃれな文房具のようですが、実は1988年創業の日本メーカー「デルフォニックス」のオリジナル商品です。
誕生は2002年。発売から20年超が経った今も、手に取る人は増え続けています。ロルバーンがファンの心を離さないのはいったいなぜ? この前編では、デルフォニックスで商品開発やマーケティング、販売に携わる、花澤翔子さん、大谷春菜さん、小岩井亮さんにロルバーンの魅力と支持される理由を、後編では、長年のロルバーン愛用者であるフリーアナウンサーの堤信子さんに、使い続ける理由をうかがいました。
“滑走路”を意味する「Rollbahn」に込められたもの
「ロルバーン」ブランドは、2001年に誕生。実は、最初の商品は時計でした。翌年、ノートではなく「メモ」というコンセプトでデビューしたのが「ロルバーン ポケット付メモ」です。ドイツ語で滑走路という意味を持つロルバーン。「この一冊から無限大の世界を広げていってほしい」という作り手の思いがこめられています。
シンプルでいて洗練されたデザインに目がいきがちですが、実は使い手のことを考えぬかれた機能にあふれる、やさしい設計をしています。
ロルバーン ポケット付メモの基本仕様
1.クリーム色の上質紙に5mm方眼罫
「中面の紙は、インクが滲みにくく万年筆でも裏写りしない、目にやさしいクリーム色の上質紙です。5ミリ方眼のグリッドは、筆記の邪魔にならず、コピーをしてもラインが写りにくい薄いグレー色。全ページに切り取りやすいミシン目が付いています」(デルフォニックス・小岩井亮さん)
2.巻末に収納に便利なクリアポケット
「ノート後方には、ミシン目に切り取ったメモがぴったり収まるクリアポケットが5枚付属されています。ポケットの両側を挟むように配置されたイエローの台紙があることで、ポケットの凹凸が紙面に響かず、最後までストレスなく書くことができます。同時に、裏表紙についたゴムの鳩目がポケットに干渉しない役割も果たしています」(小岩井さん)
3.360度折り返して使えるダブルリング
「ロルバーンと言えば、360度折り返して使えるリングタイプが定番です。立ち姿勢でも書きやすいのはもちろん、デスクの上でも場所をとりません。最終工程は日本の工場で、機械ではなく一冊ずつ手作業で組み立てています」(小岩井さん)
4.厚地の表紙と表紙を留めるゴムバンド
「ノートをとめるゴムバンドは強力タイプを採用しています。ゴムの食い込みや折れを防ぐ厚地の表紙、再生紙を利用した裏表紙は手に持って書く際、フラットに紙面を保ちます。表紙の角を落とすことで長期間の使用でも傷みにくくするといった細やかな配慮もされています」(小岩井さん)
さらにカラー、サイズともに豊富なバリエーションがあるのも特徴。多彩な表紙デザインやアーティストとのコラボレーション、地域限定デザインなどが注目を浴び、コレクターも続出する人気ぶりとなっています。
自身も愛用者!
開発者たちが考えるロルバーンが支持される理由
ここからは、使い手のことをとことん考えながら設計されているロルバーン ポケット付メモのさらなる魅力を掘り下げます。
1.カラーバリエーションが豊富で選ぶのが楽しい!
「ロルバーン ポケット付メモの表紙は、定番のイエローとダークブルーを筆頭に全14色、すべて特別に配合したオリジナルカラー、発色が良いのが特徴です。他に、シーズンごとに登場する新作カラーや、アーティストとのコラボレーション、直営店限定のデザインも人気です。
とくに、『ご当地ロルバーン』と呼ばれることもある地域の直営店限定の商品は、その土地をモチーフにしたデザインがあしらわれ、プチギフトやお土産としても喜ばれています。
僕も地方出張に行くと、必ず直営店に立ち寄り、直営店限定のロルバーン ポケット付メモを購入します。その時の気分で3冊選び、自宅の壁に並べて飾っています。アートのように目で見て楽しむことができるのも魅力なんです」(小岩井さん)
2.使うシーンに合わせてサイズを選べる!
「ロルバーン ポケット付メモは手のひらに乗るミニサイズから、バッグの中でもかさばらないMサイズ、B6に近いサイズ感で人気のLサイズ、PPポケットにA4書類を二つ折りで収納可能なA5サイズと、使うシーンに合わせて選べる豊富なサイズ展開が魅力です。
バイヤーの仕事をされている方が、ポケットに入れられるからとミニサイズを好んで使っているという話を聞いたことがあります。また、台紙が厚いので立ちながらメモをとることが多い職種の方によく選ばれるのもロルバーン ポケット付メモの特徴ですね」(小岩井さん)
3.いい意味で決まりがないから、ストレスなく使える!
「中面の用紙が方眼紙になっている魅力は、適度なガイド感がありつつ自由さもあるところです。いい意味で決まりがないのでストレスがありません。罫線だと、どうしてもなぞって書かなくてはという意識が働きます。グレーのグリッドの濃さも絶妙で、書いた文字を邪魔せず、自分の書いた文字がちゃんと目に入ってきます。
さらに方眼だと縦・横どちらでも使えます。私は普段、横型のロルバーン ポケット付メモを使用していますが、メモなど殴り書きしたい時は、後ろのページに縦向きで使うんです。一冊の中で自由に使い分けできるのもロルバーン ポケット付メモならではですね」(大谷春菜さん)
4.思考をアウトプットしやすい!
「私はもともと海外の個性的なデザインのノートばかりを好んで使っていました。だから初めてロルバーン ポケット付メモを使った時、あまりの使いやすさにびっくりしたんです。個性的なノートって、ちょっと開きにくかったり、罫線が強調されて目がチカチカすることがあったのですが、ロルバーン ポケット付メモはそういうことが一切ありませんでした。リングは折り返して使うと場所もとらないですし、方眼のさりげない色にも配慮を感じました。使いやすいってストレスがないんだと感じましたね。それとクリーム色の用紙は白色に比べて緊張感を与えないというか、何も決めずに思考をアウトプットしやすい気がします」(花澤翔子さん)
5.合わせて持ちたくなるアクセサリーが豊富!
「クリーム色の修正テープ、下敷きやしおり、表紙を保護するプロテクターなど、ノートと合わせて使用できるアクセサリーが豊富で、一緒に購入されるお客様が多いですね。気軽にカスタマイズでき、自分専用のオリジナルノートを作るような気持ちで楽しまれている印象です。最近発売したのはステンレス製のテンプレート。薄手のステンレス素材を採用しており、アイコンや記号、線などを手軽に描くことができます。さらに自分らしさを演出しながら、楽しんでいただけたらと思います」(小岩井さん)
暮らしに寄り添ってきた
ロルバーン20年の歩み
デルフォニックスが手がける商品はすべて、デザインディレクターでもある佐藤達郎社長がデザインディレクションしたもの。その佐藤さんをはじめ誰もが、発売当時、ロルバーンがこれほどロングセラーになるとは想像していなかったそうです。
「ロルバーンは開発当時、機能性や利便性だけを追求したビジネスノートやスチューデントノート、若者向けのキャラクターものやファンシーなノート類が主流だった中、シンプルでクールでありながらもチャームを兼ね備えたメモノートとして誕生しました。すると、文具にデザイン性と使い心地の良さを求める人たちに、自然と受け入れられていきました。仕様の複雑さから、人の手による作業が多いのもロルバーン ポケット付メモの特徴です。完全国内製産のメイド・イン・ジャパンアイテムとして、工場はフル稼働してくれています。もちろん、検品作業も人の手と目でしっかり行っています。
2011年にはフランスのパリルーヴル美術館地下に直営店がオープンし、海外で暮らす方にも手に取っていただく機会が増えました」(大谷さん)
その後2016年に直営店限定の商品が登場したことも、人気に拍車をかけました。
「ここでしか買えないというプレミア感、それまで無地だった表紙に柄物が出たことによる新鮮味。SNSが普及すると、ファンの方がハッシュタグをつけてロルバーンの魅力や使い方、コレクションを発信してくださるようになり、さらに盛り上がっていきました」(大谷さん)
「フレキシブル」「カップ・マルタン」…
新シリーズの発売が、ユーザー層を広げる契機に
2020年に発売した着脱できるスリット入りのリフィルで使う「フレキシブル」は、これまでとまったく違うロルバーンを作りたいという動機が商品開発の出発点になったそうです。
「ノートにまつわるストレスを開発チームがディスカッションし製品化へとつなげました。必要なものだけを持ち歩けること、書いた後にページを入れ替えながら、頭の中が整理できること、いわばシステム手帳とノートをかけ合わせたような存在のフレキシブルは、リフィルの選び方次第で、さまざまな用途に活用できる一冊となりました」(花澤さん)
そしてもうひとつ、ロルバーンのユーザー層をさらに広げるメモノートが生まれました。
「2022年に発売した『カップ・マルタン』シリーズは、デザインディレクターの佐藤が、“よりデルフォニックスのコアをあらわし、自分が使いたいものを作りたい”という思いで監修して出来上がりました。布張り風の表紙、ブラックの箔押しとリング、これまでのロルバーンと比べ、上質で大人っぽい印象です。パリのルーヴル店、そして海外の卸先からも非常に好評で、国内では男性のお客様からも支持をいただいています」(大谷さん)
「実は発売から22年、中身の紙以外、見た目は当時から何一つ変わっていません。2001年の段階で完成度が高いものを作ることができたのは、デザインディレクターの佐藤がものづくりをする上で大切にしている『小さなこだわりの積み重ね』を大事にするという姿勢があったから。
時を経て、ノートも単なる消耗品から嗜好品としても好まれるようになり、見た目も機能面も高い水準が求められるようになりました。それに応えられるような製品開発を、今後も使い手の視点を大事にしながら進めていきたいと思っています」(花澤さん)
まずはどれから使ってみる?
定番モデルのご紹介
続いて、定番のポケット付メモから、昨年発売された最新シリーズまで、今買えるラインナップを紹介します。
■ ロルバーンと言えば!「ポケット付メモ」
「シンプルで飽きのこないデザイン」と「使いやすさ」が一体となった、デルフォニックスの定番ノート。立ち姿勢でも書きやすい厚手の表紙や、インクがにじみにくく裏移りしにくい5mm方眼の上質紙、全ページミシン目付きのため、相手にメモを渡すときにもスマートです。巻末にはクリアポケットが付いています。
ロルバーンポケット付メモ ミニ
308円〜
サイズ:W82×H105×D15mm
ページ数:120ページ
ロルバーンポケット付メモ M
418円〜
サイズ:W111×H138×D15mm
ページ数:120ページ
ロルバーンポケット付メモ L
528円〜
サイズ:W143×H182×D15mm
ページ数:140ページ
ロルバーンポケット付メモ A5
858円〜
サイズ:W168×H216×D17mm
ページ数:160ページ
■ 着脱できて自在に編集「ロルバーン フレキシブル」
ページが入れ替えられる、ロルバーン フレキシブル。ページ毎に分類し直して、思考を整理・整頓することを習慣化するのにぴったりのシリーズです。中でもロルバーン フレキシブル カバー 360°は表紙と裏表紙が切り離された形状のため、リングノートと同じように、表紙を360°折り返してコンパクトに使えます。立ち姿勢での書き込みや、自宅のデスクなど限られたスペースでも使いやすいです。カバーのみの販売ほか、リフィルがセットになった「ロルバーン フレキシブル カバーL」は、スターターキットとしてもおすすめ。ロルバーン フレキシブル カバー 360°とリフィルは、Mサイズが近日発売予定です。
【カバーのみ】ロルバーン フレキシブル カバー 360° L
1980円〜
サイズ:W155×H184×D20mm
【カバーのみ】ロルバーン フレキシブル カバー 360° A5
2200円〜
サイズ:W175×H220×D20mm
「ロルバーン フレキシブル」のカバーにセットして使える専用リフィル。マンスリーやホリゾンタルの他、5ミリ方眼、7ミリ罫線、ガントチャート、TODOフォーマット等があります。様々なリフィルやアクセサリーを組み合わせることができるので、自分に合ったオリジナルの一冊を作りたいという方におすすめです。
ロルバーン フレキシブル 専用リフィル各種
ロルバーン フレキシブル リフィル方眼
Lサイズ 682円
A5サイズ 836円
ロルバーン フレキシブル リフィル罫線
Lサイズ 682円
A5サイズ 836円
ロルバーン フレキシブル リフィルTO DO
Lサイズ 572円
A5サイズ 660円
ロルバーン フレキシブル ダイアリーリフィル フリーマンスリー
Lサイズ 638円
A5サイズ 770円
ロルバーン フレキシブル ダイアリーリフィル フリーホリゾンタル
Lサイズ 726円
A5サイズ880円
ロルバーン フレキシブル ダイアリーリフィル フリーガントチャート
Lサイズ 638円
A5サイズ 770円
■ 大人の日常をちょっと豊かに「ロルバーン ポケット付メモ Cap-Martin」
デルフォニックスのデザインディレクター、佐藤達郎社長が監修したロルバーン ポケット付メモ Cap-Martinは、細部までこだわり、素材や風合い、手ざわりまで感じられる、大人の日常をちょっと豊かにする一冊で、ユニセックスでも使いやすいデザインになっています。中面は、通常のロルバーン ノートと同様の仕様で、カラーバリエーションは、深みのある色合いが上品なグレージュ、ダークブルー、ブルー、グリーンの全4色です。
ロルバーン ポケット付メモ Cap-Martin L
990円
サイズ:W143×H182×D15mm
仕様:5mm方眼/140ページ/切離しミシン目付き/PPポケット5枚付き
ロルバーン ポケット付メモ Cap-Martin A5
1320円
サイズ:W168×H216×D17mm
仕様:5mm方眼/160ページ/切離しミシン目付き/PPポケット5枚付き
Brand Data
デルフォニックス
デルフォニックスは、1988年に設立した、日本のステーショナリーメーカー。「Stationery that frees your creativity.」をモットーに、文具をカルチャーの一つとしてとらえ、商品を生み出し続けるとともに、直営店舗「DELFONICS」「Smith」ではカルチャーやデザイン心をくすぐる商品をセレクトし届けている。
HP
取材・文=井上あいみ 撮影=真名子 編集協力=Neem Tree