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ワイン愛飲家が“最後に戻る”赤ワイン。「ピノ・ノワール」の魅力を
料理とのマッチングから考える

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世界中のあらゆるワインを楽しんだワイン愛飲家が、“最後に戻る”と言われる魅惑のブドウ品種、「ピノ・ノワール」。果房は小粒で赤紫色、やや薄めの果皮が特徴で、味に繊細さと力強さを兼備したワインを生み出します。

味わいの特徴としては基本的に、チェリーやラズベリー、スミレなど上品な赤果実や可憐な花に例えられるものの、多くの人に愛されるがゆえに、世界中のいたる所で栽培され、さまざまなタイプの味わいがあることも事実。地質学的、遺伝子学的に、それらの違いを知ることも楽しさのひとつですが、もっと気軽に考えるなら、ワイン愛飲家はこのブドウの一体どこに惹かれているのでしょうか?

タイプの異なるピノ・ノワール(ピノ・ノワールのワイン)を4産地から用意して、自称“ピノ・ノワール好き”だという女性4名を参集、ピノ・ノワールに合わせたい料理を実際に合わせながら侃侃諤諤、その魅力を探ってみました。

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ピノ・ノワールに合わせるならこんな3品

今回座談会に参加したのは、ビジネスコンサルタントや料理研究家など、ワインを生業としない職種の40代の女性たち。普段から、ピノ・ノワールに限らずワインを日常的に楽しんでいる面々です。用意したピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ産、ルーマニア産、カナダ産、そして日本産の4種。

料理は、都内で料理教室[L’Ami]を主宰する三輪斗志子先生にご協力いただき、ピノ・ノワールに合わせるおすすめの3品を作っていただきました。

三輪斗志子(L’Ami 主宰)
京都出身。デモストレーション形式のお料理サロン[L’Ami]を主宰。専属のソムリエが選ぶワインとのマリアージュ、季節を感じるテーブルコーディーネートも学べ、おもてなし料理だけでなく、普段の食卓にも喜ばれるレシピが好評。

 

「イチゴと春菊のサラダ」とピノ・ノワール

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Aさん:イチゴと春菊? 斬新な組み合わせ! でもピノ・ノワールとよく合いますね。特にルーマニア産のピノが。
Bさん:本当ですね。シンプルですが甘酸っぱいイチゴとちょっと苦味のある春菊が、比較的あっさりしたタイプのルーマニア産ピノによく合います。

今回用意した4種のうち、市場価格は1500円以下という一番安価なルーマニア産のピノ・ノワール。黒海西側に位置する東欧のルーマニアは、フランスやイタリアなどヨーロッパ諸国のワイン大国と同様に長いワインの歴史を持ち、厳格なワイン法も定められていますが、1989年の社会主義体制崩壊後からようやく、その品質の高さが広く世界に知れることになりました。


ドメーニレ・サハティーニ「ラ ヴィ ピノ ノワール」

三輪先生:お好みで、黒七味と黒胡椒をかけてくださいね。
Aさん:黒七味とピノ・ノワールって合いますね! ただ、ルーマニアのピノを合わせるならスパイスは不要かも。野菜そのものの味わいを、このルーマニアピノがうまく引き出している気がします。
Cさん:そうですね。黒七味を効かせたらカナダ産の方が合うかも。そしてイチゴのニュアンスは断然カナダ産ですね。

現在、カナダも世界有数のピノ・ノワールの産地として、その可能性が注目されています。カナダ産ワインというと「アイスワイン」というイメージが強いですが、冷涼産地の特徴を反映した繊細かつ果実味と酸味のバランスに優れたピノ・ノワールの世界的評価は年々高まっています。

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フラット・ロック・セラーズ「2016 ピノ ノワール」

Dさん:ピノ・ノワールと合わせるなら、黒胡椒より黒七味の方が良い気がします。黒胡椒はずっと舌にピリピリ感が残ってしまうけれど、黒七味は後味がスーッとしているから、ピノ・ノワールの余韻を邪魔しないですね。キレイな余韻って、ピノ・ノワールの特徴じゃないですか?
全員:そうそう!

薄い絹地が折り重なるような味わいのピノ・ノワールは、その層の厚さはブドウの状態、栽培・醸造過程により、やはり価格にも反映されていますが、安価でシンプルなテイストは野菜にも合わせることができる普段使いのピノ・ノワールに。そしてスパイスなどで料理にも層が加わるにつれ、ピノ・ノワールの層も厚みを増した味わいのものを合わせる、さらに余韻の長さによってスパイスを選ぶ。日常のシーンや料理次第で選択肢の幅が広いことは、ピノ・ノワールの大きな魅力と言えるでしょう。

 

「ささみと柴漬けタルタルの春巻き」とピノ・ノワール

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Bさん:タルタルに柴漬けって、ピクルスの代わりってことですよね?
三輪先生:はい、そうです(笑)。あと梅の香りも相まって、さっぱりしたあじわいになります。アジフライなどに添えても美味しいですよ。

これはやはり、日本のピノ・ノワールを合わせたいところ。日本でも北海道や長野、岡山など年々品質の高いピノ・ノワールが造られています。今回選んだのは、山梨県旭日洋酒の樹齢15年のピノ・ノワール。

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旭洋酒「それいゆ ピノ・ノワール」

Dさん:色が他の産地に比べて控えめですが、ピノ・ノワールって色が薄いからといって、味わいが薄いとは限りませんよね。色と味わいのギャップに驚かされることが、ほかのブドウより多い気がします。
Aさん:ほんと! わー、じんわりくる! 先入観かもしれませんが、どことなくほかと比べて、やはりオリエンタルな味わいですよね。日本の微生物のせいかしら。
Cさん:柴漬けと合う!日本の発酵食品仲間ですから、合うのでしょうね。

日差しが強い土地、雨が多い土地、その産地のテロワールに極めて敏感な味わいに仕上がるのが、ピノ・ノワールの特徴です。旅するようにワインを楽しむ……ピノ・ノワールはひと口飲めば、そのブドウが育った風景が目の前に広がるような楽しみ方ができると言えるかもしれません。

 

メインは、「よだれ鶏」とピノ・ノワール

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三輪先生:柔らかく火を通した鶏胸肉です。黒酢や花椒、五香粉などで作った特製タレに、パクチーとナッツを散らしています。
Aさん:これだけしっかりしたお肉料理には王道のブルゴーニュ産が合いますね。複雑なスパイスを組み合わせたタレの味わいに、全然負けていません!
Bさん:ブルゴーニュの風格はすごいですね。両足でドーンと立っている感じ。濃さではなく、すっきり感すらあるのに芯がありますね。
Dさん:料理を安心して合わせられる包容力がありますね。パクチーにも負けていませんよ。
Cさん:ブルゴーニュは、ワイン単体でもずっと飲み続けられる存在感があるのに、料理にも寄り添える柔軟性もある、そこがすごいと思います!

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ドメーヌ・ジョエル・レミー「ショレイ レ ボーヌ」

あっさりとした野菜サラダなど相手の素材を引き立てるピノ・ノワール、スパイスなど相手の個性の懐にうまく入り込むピノ・ノワール、気候風土を感じさせつつ相手に寄り添う控えめなピノ・ノワール、そしてひとりでも相手がいてもどちらでも輝けるピノ・ノワール。

そんなさまざまな個性に、自身のあり方や周囲との調和関係を学べる気がしませんか? 座談会の話題は、そんなそれぞれの生き方を語る、思わぬ方向へと……。

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ピノ・ノワールに学ぶ、共感する、これからの生き方

「なぜ、ピノ・ノワールが好きなのですか?」とみなさんに聞いてみました。

Bさん:エレガントで品がある。そして清楚で美しいけれど芯がある女性って感じがします。そこが好きです。
Cさん:そういう女性でありたい思うからですかね?
全員:なりたい、なりたい!

全員が声を合わせて、ピノ・ノワールの特徴に、理想の女性のあり方を感じると共感しました。

Aさん:20代の頃は、例えるならカベルネ・ソーヴィニヨンみたいな感じ?(笑) 最初からインパクトがあって、ちょっと前に出たいっていうか。そういう人生観はもう過ぎたかも。ここからは穏やかに主張したい世代。一本筋が通っていて、言いたいことは言う。でもそんなに我を通したくないの、みたいな。
Cさん:分かる、分かる!個性が光っていても、周囲に合わせる能力にも長けている。主張をあまりしないけど存在感があって印象に残る人、そうありたいですよね。

冒頭、“世界中のあらゆるワインを楽しんだワイン愛飲家が最後に戻る”と書き出しましたが、“戻る”とはつまり初期にここは通過しているけど、本当の意味でその魅力にその時には気づけなかったと言うこと。年齢を重ねることによって味わいの特徴も、あり方の意味も、ピノ・ノワールという個性が無言で語る何かに共感できるようになるのかもしれません。

Dさん:でも、ピノ・ノワールが終点じゃなくないですか? 私、今はピノが好きだけど、50歳になったらまたカベルネ・ソーヴィニヨンみたいな生き方がしたいかも!(笑)
Aさん:いいですね! それで85歳くらいになったらまたピノ・ノワールに戻ればいいですね。
Cさん:ピノ・ノワールはセカンドステージなワインって気がするけど、サードステージも、もしかしたらフォースステージなワインも見つかる可能性があるのが、これからの生き方かもしれないですね。

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人生100年時代、さてあなたは今、ピノ・ノワールか、はたまたどのステージにいるでしょうか?

 

取材・文=山田マミ 撮影=真名子