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新たに注目すべきは“NY Wines”!専門インポーターに聞く
ニューヨークワインの魅力

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今年もそろそろ終盤。ホームパーティの予定で、徐々にカレンダーが埋まり始めている、という人もいるのではないでしょうか。そういったワインを楽しむシーンに向けて、「これは!」と飲み手の記憶に残る、ひと味違ったセンスあるワイン選びにおすすめしたいジャンルがあります。それが、ニューヨーク産のワインです。

 

知る人ぞ知る、NYでのワイン造りの歴史

16世紀頃のヨーロッパ人の入植によって、ニューヨーク州を含む東海岸から、アメリカのワイン文化が始まったと言われています。つまり、現在アメリカのワイン産地として最も有名な、カリフォルニアのある西海岸よりも古くから、ニューヨークではワイン造りがスタートしたのです。しかし当時から東海岸では、ワイン用のブドウ品種ではなく、現在でも栽培面積の多くを占める生食用かジュース用にされるアメリカ系品種の栽培が主流で、その原料ブドウから造られるワインの個性は、広くは受け入れられませんでした。

加えて、凍害や病害などにより、ワイン用ブドウの栽培は当時の技術では困難を極め、ニューヨークにおけるワイン造りが本格化したのは19世紀に入ってから。現在も、栽培されるブドウの75%以上をアメリカ系品種が占めますが、それでもニューヨーク州はカリフォルニア州、ワシンントン州に続くワイン生産量第3位のワイン産地で、日本全体のワイナリー数と同等の、約400ワイナリーが存在します。(2014年統計)

ロングアイランドのワイン畑に実る赤ワイン用のブドウ。
ロングアイランドのワイン畑に実る赤ワイン用のブドウ。

とはいえ、日本ではまだ知名度の高くないニューヨークワイン。私たちも日本にいながら、口にすることはできるのでしょうか? 実は、もっぱらニューヨークワインだけを輸入している、唯一のインポーター(輸入代理店)があるのです。

 

これだけは知っておきたい、ニューヨークワインの基本

「6年半前に創業した時には、まさに『え、ニューヨークでワイン造っているの!?』という質問ばかりでした。最近では『そうそう、ニューヨークってワイン造っているよね』と言われることも多くなり、ときには『ニューヨークのワインって美味しいよね』と声をかけられることもあります」

そう語るのは、ニューヨークワイン専門のインポーター、GO-TO WINE(ゴートゥーワイン)の代表・後藤芳輝さん。この日本におけるニューヨークワインの認知度の向上は、まさに後藤さんの功績であり、GO-TO WINEの成長が裏付けていると言っても過言ではありません。

ニューヨークワイン専門のインポーター、GO-TO WINE の後藤芳輝さん。NYに14年間在住していた経験とネットワークを駆使し、買い付けを行っている。
ニューヨークワイン専門のインポーター、GO-TO WINE 代表の後藤芳輝さん。NYに14年間在住していた経験とネットワークを駆使し、買い付けを行っている。

 

そんな日本一の“ニューヨークワイン通”である後藤さんに、まずはこれだけは知っておきたい、ニューヨークワインの基礎知識を教えていただきました。

 

・ニューヨークワインの主要地域は?

ニューヨーク州のワイン産地は、大きく分けて5つの地域があります。なかでも主要な地域は、11の湖が人の指のように並ぶ西部のフィンガーレイクス地域と、ニューヨーク市の中心街マンハッタンの東に浮かぶ細長い島ロングアイランド地域の2つ。

 

・最大産地のフィンガーレイクス

まず北西部のフィンガーレイクスは、ニューヨーク州のワインの約90%が生産される最大産地。細長い湖の周辺に約100のワイナリーが点在しますが、冬はマイナス20度以下にもなる極寒地域。この地のブドウ栽培を支えているのが、まさにこの湖です。最大面積を誇るセネカ湖は、幅が2〜3キロで縦が60キロのところ、水深は200メートルと深く水温が安定しています。湖沿岸の傾斜に沿って広がるブドウ畑には冷たい空気が流れ込みますが、湖によって温められて循環することにより、霜害を防ぐことができるのです。

栽培されているブドウ品種は、白ブドウが7割、黒ブドウが3割で、耐寒性のあるドイツ系品種が多く、白ブドウではリースリング、赤ではカベルネ・フランなど。マンハッタンからは車で6時間と、ニューヨークの都会的なイメージとは違った趣の自然に恵まれた地域で、資金面でも比較的負担が少ないため、熱意ある若手の生産者が起業するなど、近年のワイナリー数は右肩上がり。今後、ますます注目エリアとなることは間違いありません。

ワイン畑の向こうに、フィンガーレイクスのひとつ、カユーガ湖を望む。
ワイン畑の向こうに、フィンガーレイクスのひとつ、カユーガ湖を望む。

 

・ハイクラスなロングアイランド

一方、東のロングアイランド地域は、マンハッタンから車で2時間とアクセス良好で、富裕層の住居や別荘が建ち並ぶ、高級感漂うハイクラスなエリア。ニューヨークで最も新しい産地で、ワイン用ブドウの栽培が初めて行われたのは1973年。前述のとおり、現在ニューヨーク州全体でも75%が生食用、ジュース用のブドウ品種が栽培されており、ワイン用ブドウの栽培はまだごくわずかですが、このロングアイランド地域には1973年以来植樹された”ほぼワイン用“のブドウだけが栽培されています。大西洋の暖流の影響でフィンガーレイクスよりも比較的温暖な気候で、栽培されるブドウ比率はフィンガーレイクスの逆、黒ブドウが7割で白ブドウが3割です。黒ブドウはメルローやカベルネ・フラン、白ブドウはシャルドネなどです。

ロングアイランドのノース・フォークにあるワイナリー。
ロングアイランドのノース・フォークにあるワイナリー。

ちなみにGO-TO WINEでは、フィンガーレイクス地域の9ワイナリーから40種、ロングアイランド地域の4ワイナリーから20種、合計約60種類ほどのニューヨークワインを、日本へ輸入しています。

 

日本ワイン界にも似た潮流

ニューヨークには1970年半ばまで、わずか14ワイナリーほどしか存在しませんでした。1976年に、小規模ワイナリーにもワインの製造免許と直接販売を許可する法律「ファーム・ワイナリー法」が施行されたことをきっかけに、2000年頃には約100ワイナリー、さらに2014年には約400ワイナリーにまで急増しました。

現在日本でもワイナリーは増加傾向にあり、同じく、小規模事業者もワイン造りに挑戦しやすい環境を整えるべく導入された、「ワイン特区」制度などの恩恵を受けたもの。この10年で100以上のワイナリーが増え、現在約300ワイナリーがあります。さらにその増加のスピードは加速していて、ニューヨークの現状は日本の将来を予感させるかのようです。

「その背景には、世界的な『ファーム・トゥー・テーブル(農場から食卓へ)』という流れがあると思います。地元の食材を新鮮なうちに食卓へという、地産地消とサステナブルな食生活を理想とするものですが、食のトレンドの発信地であるニューヨークでは、その認識はさらに顕著です」(後藤さん)

世界に誇る“和食”という食文化を有する私たちにとっても、その流れは必然。加えて、生食用やジュース用ブドウの栽培が主流だった歴史を経て、その土地に合ったワイン用ブドウの栽培を試みながら、既存の銘醸産地の模倣ではなく、その土地を表現する味わいを求めるワイン造りに努める、という傾向も日本ワイン界との接点を感じます。

「西海岸の産地と比べて冷涼なニューヨークのワインの味わいは、繊細でエレガントです。アメリカワインの古くからのイメージからは、少しタイプが違いますので、創業当初は市場の反応も難しいものがありました。ですがここ数年、ライトでヘルシー、ナチュラル、などの食文化のトレンドワードも追い風となっていると感じます。生産者がよく言うのは『家で、ふたりで1本飲めてしまうようなワインを造りたい』。果実味と酸味のバランスを重視した、食事に合わせることのできる洗練された味わいが、ニューヨークワインの特徴のひとつだと思います」(後藤さん)

 

“粋”を感じさせるニューヨークワイン

世界のトレンドの発信地、ニューヨーク。その響きだけで“粋”なイメージが先行しますが、さらに地産地消やサステナブル、ライトでヘルシーなど、環境や健康に対する世界的な再認識の流れを追い風にしているところも、また“粋”。

“粋”とは本来「垢抜けていて洗練された色気があり、さっぱりとした心持ちや立ち居振る舞い」という、江戸時代から続く日本人の美意識ですが、冷涼な地で造られるニューヨークワインの味わいの特徴にも通じます。

しかしながら巷の飲食店でニューヨークワインを頻繁に楽しめるかと言えば、それはまだ少し先のことでしょう。価格の面でも、輸入量もまだ多くはない現状で手頃な値段かと言えば、外食で注文するテーブル価格を考えるとさらに少々特別感のあるワインになってしまいます。

だとしたらなおさら、そんな粋なニューヨークワインは自宅で楽しみたいもの。繊細でエレガントな味わいは、私たち日本人の食卓にも汎用性が高く、少人数でも飲み疲れせずに1本を楽しめるところもまた魅力。ワイン好きが集うホームパーティーでも、ちょっとお洒落で粋な雰囲気を演出することは間違いありません。

 

最後に、GO-TO WINEおすすめの6本をご紹介しましょう。