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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第3回
―ドイツと5つの産地―

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モーゼル 〜ベルンカステル・クースから望む雄大な景観〜

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フランスのヴォージュ山脈を源にするモーゼル川。古都コブレンツでライン川につながるまでの長い距離(蛇行しながら240kmにも及びます)の両岸急斜面に、ブドウが植えられています。モーゼルでは、素晴らしいワインのほぼすべてがリースリングから造られており、ふたつの支流、ルーヴァー川流域はドイツ最古といわれ、もう一方のザール川流域では、ドイツ最高のワインと誉れ高い「シャルツホフベルガー」が生み出されます。また、モーゼル川の中流域にある街、ベルンカステル・クースは川を挟んだふたつの街並みが一体となって、モーゼルのワイン醸造の中心としての役割を担っています。

モーゼル川流域ではおおむね南向き、南西向きの斜面にブドウ畑が広がっているのですが、大きく蛇行する河川は街から8kmに渡って北西に延び、夏に訪れると、川面に南西向きの壮大なブドウ樹の緑が映し出される素晴らしい景観が、見渡す限り続きます。モーゼル川は、その長い流域の多様な個性から“ブルゴーニュのコート・ドール”と比較されることもありますが、訪れるタイミングに恵まれた人にとって、景観の美しさという点では、モーゼルに軍配が上がるのではないでしょうか。

モーゼルワインをひと口に表現するのは難しいのですが、下写真のような辛口トロッケン(残糖9g)のほか、爽やかと表現していいフルーティーな「カビネット」や「シュペトレーゼ」といった中辛口、中甘口のワインの質の高さにあると思います。これらのワインは、かつての量産ワインとは一線を画す味わいで、多様なテロワールから繊細な甘みと柑橘のような酸味の奥には火打石のようなニュアンスやスパイスやハーブのニュアンスと、なにしろ一本筋の通った地域ごとの個性を感じ取ることができるのです。モーゼルのワインは、ちょっと玄人向けのイメージもあるのですが、比較的アルコール度数の低いワインも多く、むしろワイン初心者のほうが、素直にその良さを感じ取ることのできるワインだと思うのは私だけでしょうか。

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Dr. Loosen(ドクター・ローゼン)
「Riesling Trcoken2018(リースリング・トロッケン2018)」
2600
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

次のページで取り上げるのは、瓶の形でも個性を表現したワインの産地、フランケンです。