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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第3回
―ドイツと5つの産地―

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フランケン 〜ボックスボイテルは高品質の証?〜

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下写真のワインのような、ずんぐりと丸いボトルをご覧になったことがあるでしょうか? フランケンの「QbA」(指定栽培地域上質ワイン)という格付けのワインだけが詰めることのできる瓶で、「ボックスボイテル」(山羊のふぐり袋)と呼ばれています。

元々は、18世紀に品質の劣悪なワインと区別するため、フランケンワインの品質証明として瓶詰めされるようになって以降現代に至るまで残る、伝統的なボトルデザインです。ドイツワインと言うと、細長いボトルに瓶詰めされることが多いのですが、フランケンワインは味わいにおいても、ほかのドイツのワイン産地とは少し毛色が違っています。主役のブドウ品種はリースリングではなく「ジルヴァーナー」、かねてから産地全体として極辛口に仕上げるワインが主流という点で、ほかの多くのドイツワインとは、見た目だけではなく味わいでも、異なったキャラクターを表現しています。

ドイツの文豪・ゲーテは、妻への手紙の中で、「何本かのヴュルツブルガーを送ってくれ。此処のワインは私にとっては美味しくなく、困っている」と綴ったと伝えられています。ここでいう“ヴュルツブルガー”とは、フランケンのワイン生産の中心都市、ヴュルツブルグ産のワインという意味で、このことからも18世紀初頭からフランケンワインは、ドイツワインの中でも独自の個性を持っていたことがうかがえます。

一部の希少な甘口も造られており、伝え聞くところでは驚くほど長命なワイン(300年を超える熟成に耐える)のエピソードもあるのですが、現在では極辛口が主流です。リースリングに比べ酸が穏やかである点、柑橘から南国フルーツのような繊細ながら豊かな果実の柔らかさ、そして芯のあるミネラリティがフランケンのジルヴァーナーの特徴となり、好む人にとってはハズレのない、信頼できるワイン産地なのです。残念ながら日本では、ドイツの白ワインは一部の愛好家のためのような雰囲気もあるため、ワインショップでボックスボイテルに巡り会うことは少ないかもしれません。でももし出会えたなら、フランケン産であることを確認してレジに持って行くことをすすめます。他国のワインで似たボトル形状の量産ワインがあることだけご注意ください。

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Störrlein Krenig(シュテアライン・クレニッヒ)
「Randersacker Sonnenstuhl Silvaner2018(ランダースアッカー・ゾンネンシュトゥール・ジルヴァーナー2018)」
3300
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

次のページで取り上げるのは、ドイツの赤ワイン産地として先駆者的な役割を担う、バーデンです。