LIVING リビングと暮らし

シェア

環境を変えて仕事に集中するか、新しい体験を楽しむか。「ワーケーション」が
もたらすことと、成功の秘訣

TAG

オフィスを離れて仕事をする“リモートワーク”が進むなか、なかには自宅や普段の行動圏からも離れて仕事をする人も。観光地やリゾート地で過ごしながら、のびのびと仕事をする「ワーケーション」が、新しいワークスタイルとして昨今注目されています。

ワーケーションがコロナ禍をきっかけに注目される以前から実践し、現在は「ワーケーションコンシェルジュ」として活動する山本裕介さんに、ワーケーションのメリットや注意点などを教えていただきました。

【関連記事】家をもたない暮らしから、多拠点居住へ。“旅”とともに生きていくための家探し

 

「ワーケーション」には2種類がある

20210716_atliving_workation_001

ワーケーションとは、「work(仕事)」と「vacation(遊び)」をあわせた造語。通勤など日々のルーティンから解放され、豊かな自然の中で働くことで、生産性を上げたりリフレッシュしたりするメリットがあります。ワーケーションという言葉が流行するよりいち早く、この働き方を始めていたのが、一般企業に勤めながらワーケーションコンシェルジュとしても活躍している山本裕介さんです。全国各地でワーケーションを実践してきた山本さんによると、ワーケーションには2種類があるそう。

 

1. リゾート地や地方などで新しい体験をすることを目的にしながら、仕事ができる環境を確保する

「プライベートを充実させるだけでなく、仕事にも役立てるためにマーケティングも兼ねてワーケーションしてみる、というタイプです。地方の暮らしに触れたい方や、発見や気づきを得たい企画系・クリエーター系の方などは、その土地に触れることや新しい刺激を受けることが仕事である、とも言えますよね」(ワーケーションコンシェルジュ・山本裕介さん、以下同)

徳島県上勝町でのワーケーションの風景。現地の方の暮らしを見せてもらいに行ったそう。
徳島県上勝町でのワーケーションの風景。現地の方の暮らしを見せてもらいに行ったそう。

2. 自然のある静かな場所で仕事し、生産性を上げる

「こちらは遊びや交流をするというよりは、むしろガッツリと仕事と向き合うために、環境を変え、仕事の効率化を図るというものです。企業では、研修も交えた合宿を行ったり、リゾートホテルやコワーキングスペースが招致したりしています」

合宿タイプのワーケーションでは、仕事をしたあとにリゾート地でリラックスしたり遊んだりすることができるので、ストレスや疲れを軽減させる効果があるという研究結果も(※)。合宿という“公私混同”の企画でありながら、きっちりと時間を区切って行うことで、仕事とプライベートのメリハリを感じる人も多いようです。

※出典=株式会社NTTデータ経営研究所「ワーケーションの効果検証実験」

山本さんがはじめてワーケーションで訪れた知床半島。船の上でもPCが使用でき、ちょっとした合間も作業時間に当てられます。
山本さんがはじめてワーケーションで訪れた知床半島。船の上でもPCが使用でき、ちょっとした合間も作業時間に当てられます。

「ただ、本質的には前者の“都会で普段暮らしていると出会えない人々や生活、価値観に触れられる”ことが本来のワーケーションではないかと感じています。わたしが行っているのは前者の方で、その土地でしかできないことを子どもと体験しながら、ぎゅっとコアタイムを作って仕事をする、という働き方をしています。コロナ禍でリモートワークができるようになった方が多くなり、これから地方への移動制限が解除されていけば、多くの人がワーケーションを楽しめるようになるのではないでしょうか」

 

山本さんがはじめてワーケーションを経験したのは、2016年。北海道の知床半島でテレワークをしませんかという企画があり、「別に東京にいなくても仕事はできる」と気づいて実践したのだと言います。

「当時はワーケーションという言葉ではなく、『テレワーク』という方が一般的でしたよね。テレワークマネジメントという会社がさまざまな企画を仕掛けていたひとつが、知床半島でのワーケーションでした。わたしの働いているIT企業では、当時から全員が対面して会議するわけではなく、オンラインの方がいたり会議室にいる方がいたりという社風でした。ですから、企画に応募するとき上司には相談しましたが、仕事ができるなら場所はどこでもいい、という返事をもらえたのです。昔と違って、“会社に長くいる人がいちばん偉い”という風潮もなくなってきていますし、仕事でのアウトプットやパフォーマンスが変わらないのであれば、働く場所にこだわる必要はない、という良い方向に、日本全体が変わってきているように思います」

 

ワーケーションのメリットと注意点

ワーケーションを成功させるためには、実践する際の注意点を知っておくことが大切です。一番はもちろん、仕事がきちんとできるように努めること、でしょう。遊びの方が楽しくなってしまい、生産性が下がったり、会議に出られなかったりということがあれば、当然周囲からは歓迎されなくなります。

奄美大島へ行ったときは、地元の方に島唄を教わったりもしたそう。
奄美大島へ行ったときは、地元の方に島唄を教わったりもしたそう。

1. 仕事はするが、囚われすぎないこと

「ただし、それに気を取られるがあまり、せっかく遠くに行ったのにずっとPCの前にいた……という失敗にもつながりがちです。交通費をかけてわざわざ行ったのに、遊ぶ時間もとれず、仕事の生産性も上がらなかった、では悲しいですよね」

2. 機会を逃さないよう計画に余裕を作ること

「また、反対にあれこれ計画しすぎてしまうのも、ゆとりを失くしてしまいます。たとえば現地での交流が広がっていくと、『明日、川に鮭が戻ってくるから見に行かない?』などと、その土地・その季節にしかないものを体験できるようなお誘いを受けることがあったりします。そんな機会は滅多にないし、行きたいじゃないですか。だから仕事の予定も現地での行動も準備しすぎず、ゆとりを持っていた方が楽しめると思います。

そして、メリットばかりを求めないこと。誰かがお膳立てしてくれるのを待つのではなく、好奇心を持って自分から切り開いていくと、きっと忘れられない出会いやかけがえないものを目にする機会に恵まれますよ」

3. 移住との違いを意識して現地交流を楽しむこと

「最後に、“移住”と“ワーケーション”を分けて考えること。移住希望者だと思われて、移住前提でお話をされるケースもあり、ワーケーションで伺ったのに移住希望者だと思われて、バスツアーに参加することになってしまった、ということもあります。移住するための下見ならばそれでいいのですが、そうでないなら、そこを切り分けた方が地元の方との交流もうまくいきます」

観光ではなく、日常と地続きの“生活”をする目的で行くと、地元の人にも“お客さま”としてではなく、親しみを持って受け入れてもらえたそう。観光ではわからない、その地域の魅力や地元の人たちとの交流を持てることが、ワーケーションの最大の魅力といえるでしょう。

 

ワーケーションでの過ごし方

20210716_atliving_workation_005

実際に、山本さんはどのようにワーケーションの日々を過ごしていたのでしょうか? 成功のポイントとともに伺いました。

「まず一日の中で、仕事すべき時間を決めておくのがおすすめです。わたしの場合は、早朝、お昼、夕方、夜の1日4回、1〜2時間のフォーカスタイムを設けて、同僚とメールやチャットで連絡する時間にあてていました。メンバーもわたしとどの時間帯に話せるかがわかっているので、そのときまでに用件をお互いにまとめておき、スムーズで効率のよい連絡ができていましたね。

作業時間は、やるべきことのボリュームによっても違いますが、地域の方との交流や遊びを日中にすることが多いので、朝早めに起きて作業したり、午前中は遊んでお昼過ぎから仕事したり、あるいは夜の時間を使っていました。仕事に取りかかる時間が少ないように感じるかもしれませんが、一日中会社にいたって、集中できる時間は限られていますよね。ワーケーション中は、その時間内にしっかりとパフォーマンスを出さなくてはという思いがあるので、作業時間をぎゅっと凝縮させることで集中力が上がりました」

長野県諏訪郡富士見町にある「富士見 森のオフィス」。宿泊施設も兼ね備えたコワーキングスペースで、環境が変わるだけで作業も捗りそう。
長野県諏訪郡富士見町にある「富士見 森のオフィス」。宿泊施設も兼ね備えたコワーキングスペースで、環境が変わるだけで作業も捗りそう。

 

同じ作業をしていても、場所や環境が変わるだけで、心の軽さや時間の使い方が変わるもの。自分の仕事や働き方を見つめ、どのようなプランならワーケーションが楽しめるかを考えてみてはいかがでしょうか。はじめからまとまった期間で計画しなくても、2~3日だけの小さな旅のように“移動”してみるのもいいかもしれません。

最後に、次のページでは、編集部が見つけたおすすめのワーケーションプラン3選を紹介します。

Profile

20210716_atliving_workation_prof

ワーケーションコンシェルジュ / 山本裕介

東京⼤学で社会学を学んだ後、広告代理店を経て現在はIT企業でマーケティングを担当。ワーケーションという言葉が一般的でなかった2016年から北海道・オホーツクエリア、⻑崎・五島列島、⿅児島・奄美⼤島、徳島・神山町/上勝町、和歌山・南紀白浜、福岡・糸島、群馬・みなかみ、長野・八ヶ岳エリアなど、5年間で全国15ヶ所以上で⼦連れリモートワークを実践し、情報発信を行う。FBグループ Local Remote Work Network を立ち上げるなど各地域のネットワークづくりをサポート。