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失敗しないために、コツを知っておこうQ&Aでよくわかる
賃貸住宅の賢い探し方

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進学、就職、転職など、この春から新しい環境で生活をはじめる、という人も多いのでは? それに合わせて、思い切ってひとり暮らしをはじめる人、友人やパートナーと暮らしはじめるという人、気分一新引っ越したいと考える人など、その誰もが不安に感じるのが「物件探し」。“借りる”とはいえ、引越し費用や敷金・礼金、毎月の家賃を考えれば、“高い買い物”ともいえます。失敗しないために、物件探しの正解を知っておきましょう。

不動産コンサルタントとして、家や土地に関するさまざまな悩みに的確なアドバイスを送っている長谷川 高さんに、いい物件はどのように探したらいいのか、ポイントを教えてもらいました。
 

Q.事前に決めておく条件は?
A.予算とエリア。とくにエリアは実際に足を運んで。

「予算とエリアは、必ず最初に決めておく必要があります。特にエリアは、勤務地を考慮して検討するのは当然なのですが、住む場所は日々暮らす場所ですから、どういった生活を送りたいか、を見据えて決めることが大事です。休日、どういったところで食事をとるか、といった環境だけでなく、さらに長い目で見ればどういった交友関係を広げていきたいのか、といった、住んでいる人の傾向まで視野に入れて検討するといいと思います。

まず、その地域を通っている電車に乗ってみてください。例えば23区内でも、地域によって車内広告の内容がまったく違うものです。ある路線は、サラ金やパチンコの広告ばかり、ということもあります。広告は沿線住民の属性にマッチしたものが入りますから、傾向を知るいい材料になります。そして、駅前のカフェでお茶でもしながら行き来する人を眺めていれば、どんな環境にどんな人たちが住んでいるか、なんとなくわかるものなんですよ」

電車や駅前など、住民が多く行き来するパブリックスペースに足を運んでみましょう。どんな人たちが暮らしているか、街の“顔”が見えるはずです。
電車や駅前など、住民が多く行き来するパブリックスペースに足を運んでみましょう。どんな人たちが暮らしているか、街の“顔”が見えるはずです。

Q.物件情報はどこで入手すればいい?
A.街の不動産会社の情報はあなどれません!

「インターネットを活用するのは、いまや当たり前ですよね。誰でも簡単に大量の物件情報が手に入ります。ただしインターネット上には、借り手のないまま掲載され続けているような、条件のよくない物件も多く、玉石混交の状態だと考えたほうがいい。ネットオークションのようなイメージですね。あくまで、相場を把握するためのツールと捉えてください。

インターネットだけに頼ることなく、街の不動産会社さんへも行ってみましょう。大家さんから直接情報を預かっていることも多く、優良な物件を安く借りられる可能性も高いんです。しかも、どこへ行っても同じ情報しかないと言われますが、そんなことはありません。3〜5軒は足を運んで情報をもらうといいでしょう」
 

Q.気に入った物件はすぐにキープするべき?
A.現在は借り手市場。焦る必要はありません。

「気に入った物件がいくつか見つかったら、賃料や間取り、窓の方向など、自分でざっと一覧表を作って比較してみるといいと思います。自分でまとめることで優先事項が見えてきますから。逆に、犠牲にしてもいい条件をここで洗い出しておくと、条件にこだわったばかりに予算オーバー、という事態を防げます。

検討には十分に時間をかけて、1〜2日で決めようとしないこと。最低でも、探し始めてから2週間くらいはかけて検討してください。以前は、いい物件はすぐにキープしないとほかの人に取られてしまう、なんて言われていたし、いまでも仲介会社はそう言うかもしれません。でも実は、特に単身者向けの物件は今、エリアに関係なく余っているんです。“団塊ジュニア”と呼ばれる、今40歳前後の人たちの学生時代とそれ以降、ワンルームのような単身者向けの賃貸住宅が大量に作られてきたのですが、現在はそういった賃貸住宅を必要とする若年層の人口が減っているので、競争相手は意外と少ない。仮に検討している間にほかに借り手がついても、同じようないい物件がほかにも見つかるはずです」
 

Q.いちいち内見するのは面倒だし気が引ける……
A.内見は必須! でも事前に場所を確認に行って

「仲介会社の担当者立会いの下、物件の中をチェックさせてもらう“内見”ですが、何軒も回るのは時間も労力もかかるし、仲介会社のスタッフに気を遣ってしまうこともあると思います。そんな人は、事前に場所を教えてもらい、ひとりで行ってみて周辺環境や建物の状態を確認し、候補を絞り込むのもいい方法です。行くなら日中に。暗くなってからでは外観などのディテールが確認できませんから。また、小さな工場が多い下町や、工業地帯や運送業者の配送所などに近い地域なら、平日と休日で、騒音や交通量などがまったく異なるので、2度行くことをおすすめします。

その上で、ここだ! と思った物件は必ず内見を。同じ建物内のほかの部屋で確認する、という策もありますが、やっぱり外からの騒音や窓の外の景色、日差しの差し込み方などは、部屋に入らないとわかりませんから。借りたい物件に人がまだ住んでいる、という状態なら、ダメモトで中を見せてもらえないか、居住者に交渉してみるといいと思いますよ」

遮音性や日当たりなど、その部屋に行ってみなければ分からない“生の情報”はたくさんあります。
遮音性や日当たりなど、その部屋に行ってみなければ分からない“生の情報”はたくさんあります。

Q.見落としがちなポイントとは?
A.耐震性は確認を!

「1995年に起こった阪神・淡路大震災では、亡くなった6500名の方の実に8割が、建物の下敷きになって亡くなっています。耐震性には気を配りたいですね。日本では1981年に『新耐震基準』が定められているので、それ以降に建てられたかどうかはひとつの目安です。それ以前の建物でも、耐震補強がされていればまだ安心ですが、多くの物件ではまだまだ耐震工事が行われていないのが実情。また、1981年以降も現在まで、耐震技術はどんどん高まっているので、できればより新しい物件がおすすめです」
 

Q.そもそも家は借りたほうがいい? いずれは買ったほうがいい?
A.人生何があるかわからない。先が決まっていないなら賃貸で。

「昔は、家庭を持ったら家を買うのが常識で、“一国一城の主”ともてはやされるなど、家を所有することにステータスを感じる人も多かったものですが、現代ではそういった物欲が少ない人が増えています。モノに縛られず自由に生きられる“持たない暮らし”が流行っていますね。それだけでなく、いったんローンを組んで家を建てたなら、隣に問題を起こす人が引っ越してきたとか、周辺の環境が変わって住みづらくなった場合も簡単には引っ越せません。でも賃貸ならフレキシビリティーがあります。引っ越してしまえばいいんですから。悩んでいるうちは、賃貸で過ごすのがいいと思います」
 

A.どこに住むかは生き方を左右する!

「引越しが簡単な賃貸住宅とはいえ、どこに住むかはとても重要。中国の故事で“孟母三遷”という言葉があります。墓地の近所に住んでいた孟子は、葬式ごっこをして遊んでいました。そこで母親が心配して市場の近くに引越すと、今度は商売の真似事をして遊ぶようになった。再び心配した母親が学校の近くへ引っ越すと、孟子は学校で行なっている儀礼の真似をして遊ぶようになり、やがて儒家を代表する人物になった……というもの。つまり、住む場所が人に大きな影響を与えるんですね。素敵な人になりたいなら、素敵な場所にすむべき。どういうところに住むかは、どう生きるかということだと思うのです。妥協せず、自分に本当に合った物件を見つけてください」

これらのポイントをふまえて新しい“城”が見つかれば、晴れて賃貸契約締結。新しい暮らしをはじめましょう。
これらのポイントをふまえて新しい“城”が見つかれば、晴れて賃貸契約締結。新しい暮らしをはじめましょう。

 
取材・文=@Living編集部
 

Profile

長谷川 高

不動産コンサルタント
長谷川 高

株式会社長谷川不動産経済社代表。大手デベロッパーの投資担当としてマンション・ビル企画開発事業に携わったのち、1996年に独立。インターネットを活用した不動産コンサルタントの先駆けとなり、以来一貫して、個人・法人の不動産と投資に関するコンサルティング・調査・顧問業務を行っている。「不動産をわかりやすく伝える」ことをモットーに、講演や執筆活動など幅広く活動中。


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WAVE出版 ¥1,512

“理想の家”の探し方を、情報取集から敷金返還までを通して体系化した賃貸生活者のためのマニュアル本。初めて物件を借りる人はもちろん、何度も引越しをしている人にも目からウロコのノウハウが凝縮されている。