製硯の過程
1、採石
石はブローカーから情報を得て買い付けることもあれば、自ら中国などに採石しに行くこともあります。採石地の多くは私有地や国立公園などの場所であるため、現地で採石や研究などを行っている人物とのコネクション作りも大切な仕事のひとつ。オーダーの内容によっては、石を探すところからスタートすることも珍しくありません。
2、彫り
硬度、密度など石の性質をよく鑑みた上で設計図を引きます。金鋸やスライサーを使って原石を大まかに切り出したら、その後は鑿などの道具を使って石を緻密に手彫りしていきます。彫りに要する時間は、石の硬さや硯の大きさにもよりますが、だいたい数週間から1ヶ月程度。長いものでは1年以上かかるものもあるといいます。
3、磨き
彫り以上に多くの時間を要する磨きの行程。硯は彫りによってある程度の形のベースを作った後、丹念な磨きによってそのデザインや使い心地を細部にわたって調整していきます。
4、仕上げ
硯の仕上げには、墨がけをする方法と、漆がけをしてより装飾的に艶を出す方法などがあり、持ち主の好みに合わせて施します。完成前に一度試しに使ってもらい、さらなる微調整を加えたらいよいよ出来上がり。期間は数ヶ月でできるものから、年単位でかかるものまでさまざまです。
青栁貴史 渾身の3作
石紋の美しさを見事に活かした歙州硯は、墨をするときのシャカシャカと小気味良いレスポンスが特徴なのだそう。小ぶりながらもぽってりと肉厚な造形で、思わず触れてみたくなります。
フライパンの上でバターがとろけるような感じで、とろんと墨がおりるという端渓硯。さりげない飾り彫りと、石の自然のままの表情をあえて残したかのようなフォルムが印象的です。
日本の信楽焼のような表情を持つこちらは、澄泥硯(ちょうでいけん)と呼ばれるもの。砂が堆積してできた原石から作られます。鋒鋩が力強く独特の墨あたりが特徴。たっぷりすれる大きさです。
Shop Data
宝研堂
所在地:東京都台東区寿4-1-11
電話番号:03-3844-2976
営業時間:9:00〜18:00(月曜〜土曜)/10:00〜17:00(第1・3日曜)
定休日:第2・4・5日曜、祝日
http://www.houkendo.co.jp/
取材・文=小堀真子 撮影=真名子