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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第8回
―南米チリと5つの産地―

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4. エルキ・ヴァレー
− 北の高地のワイン産地 

歴史のあるチリでも、近年新たに多くのワイン産地が生まれています。エルキ・ヴァレーはセントラル・ヴァレーのはるか北、海抜1000mから2000mという高地でもブドウ栽培がされている、チリでは新しいワイン産地です。もともとは「ピスコ」という蒸留酒用のブドウが栽培されており、ワイン用ブドウには不向きだと考えられていた地域でした。そういった固定観念を覆したのは、イタリア系チリ人とその従兄弟のイタリア人の、情熱と不退転の決意でした。

1995年にエルキ・ヴァレーでピスコ用ブドウ栽培を営んでいたアルド・オリヴィエ・グラモラの従兄弟ジョルジオ・フレサティが、観光でエルキ・ヴァレーを訪れたことがすべての始まり。トレンティーノでワインメーカーとして働いていたジョルジオは、ピスコ用のブドウを食べて感動し、滞在初日にワイン造りを決意したといいます。

ふたりの行動は迅速でした。1998年にはビーニャ・ファレルニアを設立、ピスコの蒸留所に発酵用タンクを設置することからワイン造りを開始し、2004年にはワインのみの生産に切り替えます。その間、ジョルジオはトレンティーノでの仕事を続け、イタリアとチリで年2回のワイン造りをしていましたが、2009年に完全にチリに移住し、ビーニャ・ファレルニアの仕事に専念するようになります。現在エルキ・ヴァレーは、追随するワイナリーも現れるなかでも、トップ生産者の地位を確固たるものにしています。さまざまな品種を栽培していますが、とくに興味深いのはフランス北ローヌを思わせる深み、奥行きを感じるシラーではないでしょうか。まだまだ発展途上の産地ですが、フランスワインファンの方にも試していただきたい注目産地です。

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Vina Falernia(ビーニャ・ファレルニア)
「Syrah Gran Reserva2016(シラー・グラン・レゼルヴァ2016)」
2100円